【ジャズギターを弾くために10分でわかるジャズの基本】まずはビバップについて理解しよう
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はじめに:なぜビバップを理解する必要があるか
「ジャズの特徴は?」
と聞かれたら、多くの人がアドリブ(即興演奏)と答えますが、
「ロックでもアドリブはするけど、ジャズとの違いは?」
と聞かれたらどう答えるでしょう?
答えは、ビバップになっているか、あるいは、ビバップの語法を踏まえているかどうか、です。
(人によっていろんな答え方があるとは思いますが、『ビバップ』という核の部分は変わらないはずです)
(モダンジャズにおいて)
ジャズは、『ビバップ』という演奏方法(演奏規則・語法)が大きな鍵になっています。
※ビバップはバップと呼ぶこともあります。
私(肉じゃぎの管理人)は「ジャズを弾けるようになりたい!」と思ってから、ジャズが弾けるようになるまで10年以上も掛かりました。
原因はジャズ(ビバップ:bebop)の根本を理解せずに、ただただウェスモンゴメリーやグラントグリーンなどの演奏をコピーしたり、教則本をかじったりしていたからです。
ジャズが弾けるようになるには、ビバップの理解が不可欠。
有名・無名、また演奏する楽器を問わず、プロのジャズミュージシャンでビバップを理解していない人は一人もいません。
簡単に言うと、
・ジャズを弾くにはビバップの理解が必要
・ビバップの理解のためには、そのバックボーン・歴史を知る必要がある(少なくとも知っておいた方が良い)
ということです。
ジャズを演奏するために、まずはビバップをきちんと理解しよう!
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ビバップとは
1:ビバップの歴史『ビバップの起こり』
ジャズが生まれた場所はアメリカ。
1900年頃に ニューオリンズ・ジャズ、デキシーランド・ジャズが生まれ、1930年代にスウィング・ジャズへと変化していきます。
まだ、この頃のジャズは現在のスタイルのジャズとは違います。
ジャズはもともと大勢の人で踊って楽しむ、いわゆるダンスミュージックだったと言われています。
バーやレストランでジャズを演奏し、それに合わせて皆でダンスを踊ってワイワイと盛り上がっていたのです。
そんなジャズが、ビバップの完成によって一変し、今のスタイル(= いわゆるモダンジャズ)になりました。
ビバップが生まれたのは1940年代初め。
ミントンズ(正確にはミントンズ・プレイハウス)というクラブ・バーにチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、ケニー・クラーク、セロニアス・モンクなどのミュージシャンたちが集まってジャムセッションをしていました。
ジャズを変えたミントンズでのセッション
ビバップの起こりについては諸説ありますが、
・ミントンズでミュージシャンたちが夜な夜なセッションをして、技術を競ったりしているうちに、ビバップが生まれた
というのが共通見解です。
【ビバップの生みの親】
ビバップを生み出したのはチャーリーパーカーです。
(これも諸説あり、チャーリーパーカーら、ミントンズでセッションをしていた人たちの中で集団的に発生した、という見解もあります)
チャーリーパーカーがいなければビバップ、つまり今のジャズはおそらく生まれていなかったことになります。
【ここまでのまとめ】
・ジャズは1900年頃のニューオリンズ・ジャズ、デキシーランド・ジャズから始まり、1930年代にスウィング・ジャズへ
・ミントンズで夜な夜なミュージシャンたちがセッションをして腕前を競ったりしていた → ビバップの発生へ
・1940年代初めに生まれたビバップがそれまでのジャズを一変させ、現在のスタイルのジャズの基盤となった
・チャーリーパーカーがビバップの生みの親
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2:ビバップの歴史『モダンジャズの創始者:チャーリーパーカー』
1940年代初め、チャーリーパーカーはビバップを生み出しました。
パーカーの古い音源(1942年ごろ)を聴くと、他の演奏者に比べてパーカーのアドリブだけが突出しているのがわかります。
(当時、すでにリズムや間の取り方が、ほぼ今のジャズのスタイルになっている)
※↓下の動画参照
チャーリーパーカーについては、
・若い頃にコンテストで演奏して、下手すぎてシンバルを投げつけられた
・そのあと山籠りして(?)猛特訓し、出てきたらめちゃくちゃ上手くなっていた
・ドラッグを買う金が必要でサックスを売って、プラスチックのおもちゃサックスでライブをした
・ドラッグがなくなったため、かわりに酒を飲みまくって泥酔し、そのままレコーディング(Lover Manセッション)
・若くして亡くなったが(1955年・34歳没)、ドラッグや酒で体がボロボロになっていたため、遺体を見た人(医師?)が60歳代と勘違いした
など、数々の伝説や逸話があります。
偉業を成し遂げただけあって、演奏だけでなく生き様そのものが破天荒で興味深い、という感じです。
※興味ある方はぜひ調べてみてください。パーカーの人生を描いた映画もあります(→『BIRD』)。
*****【参考動画】*****
↓1940年代初期(たぶん1942年ごろ)に録音された演奏。
1:40あたりから始まるパーカーのアドリブだけ他のミュージシャンに比べて異質で、リズムの取り方やフレージングがモダンジャズのスタイルになっているのがわかります。
【参考記事】
uDiscoverMusic | 洋楽についての音楽サイト
“ビバップ”とは何か? チャーリー・パーカーが竜巻の如く街に吹き込み、ジャズ・シーンを芯から震撼させた時、当然のことながらビッグアップルは何が起きたのか分かっていなかった。それは19...
菊地成孔×片倉真由子対談 ジャズはなぜ人を「興奮」させるのか? | 特集記事 | 国際交流基金アジアセンター
国際交流基金アジアセンター
2016年1月28日のめぐろパーシモンホールを皮切りに、『Asian Youth Jazz Orchestra』(以下『AYJO』)の日本ツアーが東京、いわき、七ヶ浜の3か所で開催される。『AYJO』
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ビバップとその後のジャズ
ビバップによってジャズは大きく変化し、現在にまで通じるジャズの基礎となりました。
ビバップからハードバップへ、そしてモードジャズが生まれ、フリージャズへ ──
とジャズはどんどん変化していったのです。
が、ビバップ移行のジャズの歴史、ジャズの変遷についてはここでは詳しく書きません。
(長くなりすぎるのと、演奏に活かすことに主眼を置くため)
ビバップ以降のジャズを(若干乱暴に)まとめると以下のようになります。
【ビバップ以降のジャズ 簡潔なまとめ】
・パーカーの後に続いて多くのミュージシャンがビバップを習得し、ジャズを演奏した
・ビバップの影響が大きすぎて、その後のミュージシャンたちはなかなか逃れられなかった
・ビバップから脱しようとして、パーカーの後に続く天才たちが新しいジャズを生み出した
・とにかくビバップがモダンジャズの基盤
・新しいスタイルの模索は現在も続いている
ビバップがいかに大きな影響力を持っているかがわかるかと思います。
多くの天才ミュージシャンたちがビバップから解き放たれたジャズを演奏しようと模索してきましたが、ビバップから離れすぎるとジャズ自体から遠ざかってしまうため、結局のところジャズはビバップから離れることができない、と言っても過言ではないでしょう。
『ビバップの誕生とビバップから脱するための新しい手法の模索』
これがビバップ以降のジャズの歴史です。
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ジャズを演奏するためのビバップの理解
ビバップの歴史とビバップがジャズの基礎になっていることがわかったところで、ビバップの特徴を見ていきましょう。
ジャズ初学者がジャズを弾こうとしてアドリブをしても、ジャズっぽくならないケースをよく見かけますが、
・ビバップを理解していない
・ビバップになっていない(=ビバップのアドリブ法則に沿ったフレージングになっていない)
という原因がほとんどです。
ビバップの特徴を理解して、ジャズの重要な要素を把握しましょう。
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ビバップの特徴は以下の通りです。
(似たような言い回しもありますが、なるべく理解しやすいように列挙します。)
ビバップの特徴
- コード進行とフレーズ(メロディー)が一致している
- コードの流れを感じさせるフレージング
- コード進行と一致していなくても、プレーヤーが代理コードや別のコードを想定してフレージングしてもよい(ただし元のコード進行とマッチしている必要あり)
- 『コードトーン・コードトーンへのアプローチノート・スケール』の3つの要素がフレーズを組み立てている
- フレーズにはコードトーン(1・3・5・7)とノンコードトーンが含まれるが、それらの配置とアクセントが正しく成立していないとダメ
コード進行やコードトーンという言葉がたくさん並んでいますが、ビバップ、つまりジャズではコード(和音)が非常に重要な要素になっています。
逆に言えば、
・コードトーンを無視する
・コード進行とフレーズが合っていない
・フレーズにコードトーンを適切に配置しない
・ノンコードトーンのみでフレーズを構成(逆に難しいけど…)
・リズムとコードトーンのアクセントに決まりがない
というアドリブをするとビバップでなくなる(=ジャズらしさから遠ざかる)ということです。
ロックなど、ジャズ以外のアドリブではこのようなソロでも成立するのですが、ジャズにおいてはきちんとビバップの語法にのっとって演奏する必要があります。
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ビバップの具体的な解説
上に挙げたビバップの特徴を具体的に解説します。
基本的にはコード進行とメロディーの一致が重要ポイントです。
・曲のコード進行に対してメロディーが一致・リンクしていること。
・コードトーンがリズムに沿って正しく配置されていること。
これらを守らないとビバップにはなりません。
上記を守った上で、メロディーに装飾(半音上 or 下からのアプローチなど)を加えたり、コード進行を別の進行に置き換えて(代理コードや裏コード)演奏することによってビバップが成立していきます。
※※※コードトーンとは※※※
4和音の場合:コード(和音)を構成している 1度・3度・5度・7度 の音こと。
3和音(トライアド)の場合:コード(和音)を構成している 1度・3度・5度 の音こと。
3度はメジャーコードなら 3、マイナーコードなら -3
7度はメジャーコードなら △7、マイナーコードなら -7
※7度(セブンス)は一般的に『セブンス』というと -7のこと指すので、メジャーセブンスコードのセブンスを指す場合は『メジャーセブンス』と表現しないといけません。
コードトーン以外の音はノンコードトーンです。
【例1】
例えば
Dm7 - G7 - C△7
というコード進行があった場合、
・Dm7のところではDm7のコードトーンを軸にしたメロディー(1・3拍目にコードトーン)
・G7のところではG7のコードトーンを軸にしたメロディー(1・3拍目にコードトーン)
・C△7のところではC△7のコードトーンを軸にしたメロディー(1・3拍目にコードトーン)
を演奏します。
【例2】
ビバップではコード進行の置き換え、代理コードの想定が可能です。
なので以下のように演奏してもかまいません。
例えば
Dm7 - G7 - C△7
というコード進行があった場合、
・Dm7 - G7 のところを G7のみと捉えて、G7のメロディー 〜 C△7のメロディー
・Dm7 - G7 のところを D♭7(G7の裏コードなので)のみと捉えて、D♭7のメロディー 〜 C△7のメロディー
・全体をCメジャーキーと捉えて、C△7一発のメロディー
・全体をCメジャーキーと捉えて、C△7の平行調であるAm7一発のメロディー
を演奏。
※それぞれ1・3拍目(表拍)にコードトーンを配置する
『えーっ!そんなことしてたらメロディーにならないよ!』
『コードばっかり追ってなきゃいけないじゃん!』
『めんどくさっ!』
となどと思いがちですが(よく思いました)、それをなんとかして演奏するのがジャズなのです。
※慣れてくればなんとかなる
ジャズにおいてコード(コード進行)は伴奏中もアドリブ中も必ず意識しないといけません。
●ポイント1
解釈と演奏はすべて奏者に委ねられます。
きちんと演奏できれば、メロディーが成立していれば、勝手に解釈 or 別の進行を想定して演奏してもOKです。
極論すれば、破綻していなければなんでもアリです。
●ポイント2
もちろんきちんと演奏できることが前提となりますが、
・曲のコード進行に対してどれだけ別の解釈ができるか、どれだけ多様なアプローチができるか。
がジャズミュージシャンのレベルを計る指標となります。
(ジャズの道は険しい!)
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■■■ 余談(ここ大事)■■■
ジャズ初学者や楽器を演奏しない人にとって、『ジャズはアドリブで演奏する』と聞くと自由に弾いている印象がありますが、演奏者にとってはビバップという大きな制約の中でアドリブしていることになります。
・ビバップの語法の中で、ビバップの語法を守った上で、いかにカッコよく演奏するか
・そもそもビバップは難しい(もともとはミントンズでのハイレベルなセッションの中で生まれたもの)ので、いかにミスらず上手く演奏できるか
がジャズミュージシャンの課題なのです。
ハイレベルなミュージシャンになってくるとビバップの制約を打ち破りたくなってきて、新しい方法を模索します。というか、してきました。
『ビバップ飽きたわー。なんか新しいやり方はできないもんかね?』→ モードジャズなどの新しいジャズスタイルの誕生
という流れがビバップ以降のジャズの歴史を作った、と言えます。
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ジャズはコードが命
ここまででおわかりいただけたと思いますが、ジャズはコードが命!
とにかくコードの理解が重要です。
・コードの度数構成を理解している
(○△7は1・3・5・△7、○m7は1・-3・5・-7、など)
・指板上の音程配置を理解している
・コードトーンが指板上のどこにあるか把握している
・コードトーンに対して使用できる(サウンドがマッチする)テンションを理解している( =スケールの理解)
・一つのコードに対してさまざまなポジション(6〜4弦ルート、テンションの有無など)を把握している
・コードに対して適合するスケールを理解している( =コードトーンとテンションの理解)
・コードに対してのテンションの位置を配置している
などなど
コードの知識が浅くて、理解が曖昧なジャズミュージシャンはいません。
コードの理解が深ければ深いほど、ジャズのスキルも向上します。
(もちろんその他にも様々な要素はありますが)
まとめ:ビバップを習得するためには
ここまでビバップについて、歴史や特徴について解説してきました。
ビバップの習得はジャズを演奏するにあたって、非常に重要な要素です。
ジャズを演奏するための第一歩目の大きなハードルが『ビバップの習得』である、と言っても過言ではありません。
習得するため必要なことを挙げると、
・まずはいろんなジャズに触れる
・最低限の演奏技術
・基礎的な音楽理論の把握
・コードの知識と理解
・実際に演奏してトライアンドエラー
です。
なんとなく弾けちゃう、ということはありません。
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最後に、ジャズを演奏するため(ビバップ習得)のスキルチェックリストを作成したので、自分に不足している点を確認して、弱点の克服に挑んでみてください。
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ビギナー向け・ジャズ演奏のためのスキルチェックリスト
□ チャーリーパーカーの音源をいろいろ聴いた
□ チャーリーパーカー以外のジャズ音源をいろいろ聴いた
□ ジャズスタンダードの曲を弾けなくても、いろいろ聴いて知っている(最低でも20曲くらい)
□ ダイアトニックコードを理解している
□ メジャーセブンスコードを最低5ポジション(6弦〜4弦ルート、テンションを含むものなど)は押さえられる
□ マイナーセブンスコードを最低5ポジション(6弦〜4弦ルート、テンションを含むものなど)は押さえられる
□ セブンスコードを最低5ポジション(6弦〜4弦ルート、テンションを含むものなど)は押さえられる
□ マイナーセブンス♭5コードを最低3ポジション(6弦〜4弦ルート、テンションを含むものなど)は押さえられる
□ ディミニッシュコードを3ポジション(6弦ルート・5弦ルート・4弦ルート)で押さえられる
□ ↑上記の他、どんなコードを見てもだいたいすぐに押さえられる([例] A-6、E♭△7 9、D7#5 など)
□ 指板の音程を把握している(例えばルートに対して『#11』がすぐにどこにあるかわかる)
□ メジャースケール(イオニアン・ドリアン・フリジアン・リディアン・ミクソリディアン・エオリアン・ロクリアン)が弾ける
※以下スケールに関しては、網羅してなくてもどんなスケールかわかればとりあえずOK
□ リディアン7thスケールが弾ける
□ オルタードスケールが弾ける
□ ハーモニックマイナー・パーフェクト5thビロウスケールが弾ける
□ ディミニッシュスケールが弾ける
□ ホールトーンスケールが弾ける
□ ペンタトニックスケール(6弦ルート)が弾ける
□ ペンタトニックスケール(5弦ルート)が弾ける
□ ペンタトニックスケール(4弦ルート)が弾ける
□ ジャズブルースのコード進行がわかる & 弾ける
【注】
あくまでスキルを確認する目安です。
(ビバップが弾けるようになるためには上記のことはなるべくできていないと難しい)
弱い箇所があれば、重点的に練習に取り組むのをオススメします。
上級者には知ってて当たり前、な内容になっております。