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こんな演奏はNG! 下手に聴こえる演奏とは?

ジャズギターを演奏するからには、やっぱり聴いてくれた人に喜んでもらいたいし、『上手い』とか『よかった』とか褒められたいものです。

しかし!

そう簡単にはうまく行かないのがジャズギター。

他人の演奏を聴いているときには「ああすれば…」とか「こうすれば…」と思うのに、自分の演奏はイマイチ客観的に判断できず失敗しがちです。

今回はジャムセッションやライブで『下手に聴こえる演奏・やってはいけない演奏』をまとめてみました。
なんとなく演奏するよりも、NGな演奏を頭の中で意識しておくと回避しやすいです。

『なるべくNGな演奏をしない』=『上手な(上手に聴こえる)演奏』ということで、上達の参考にしてみてください。



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【NG演奏の条件・その1】リズムが跳ねている

ジャズギターのアドリブで割とよく見かける『リズムが跳ねている』演奏。
バック(ドラムとベース)のスイングにつられてピョンピョンしちゃっている演奏です。

ビギナーにありがちではありますが、ジャズ歴が長くても跳ねるクセが抜けない人もいます。

私(肉じゃぎの管理人)も跳ねグセを脱却するのに時間がかかりました。
、、、ので意識のしづらさと抜け出すまでの苦労は非常によくわかります。

ジャズはバック(ドラムとベース)のリズムが強烈にスイングしていて、その上に流れるようにメインのフレーズ(ソロなど)が存在することで気持ちのいいグルーブが成立しているのですが、ある程度訓練を重ねないとどうしてもリズムのスイング感に引っ張られてしまいます。

自分の演奏がピョンピョン跳ねているかどうか判断するには、自分の演奏を聴いてみるしかありません。

テーマは決まったフレーズなので割と跳ねづらいですが、アドリブは跳ねやすい(フレーズのリズム感が出やすい)です。

【無理やり言語化】
『ター タラー タラララー タララララー』←跳ねてない
『タッタッタ〜ラ タッタ〜ラ タッタッタ〜ララ〜』←跳ねてる
(↑言語化してあらわすとこんな感じ)

『タッタッタ〜ラ』みたいな跳ねてるリズムでフレーズを弾いていたら要注意!
ジャズというより、"なんちゃってジャズ" 感が出てしまいます。


脱却するには以下のような練習が効果的です。
・アドリブをギターで弾くのではなく口で歌ってみる(跳ねないように意識して)
・跳ねていないリズムのアドリブを聴きまくって体に染み込ませる
・プロのアドリブを聴いて口で何度も歌ってみる


跳ねずに流れるようなフレーズを演奏をしましょう。



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【NG演奏の条件・その2】弾きまくる

特にギタリストに多い気がする『弾きまくる』問題。

最初から最後までガンガン弾いてしまうと、聴いている人は引いてしまいます。

ギターは
・管楽器のような息継ぎが必要ない
・脳内とリンクせずに弾けてしまう(なんとなく弦を弾いて音を出せてしまう)
・手癖で弾ける
といったイージー(容易)に弾ける要素が揃っているので、弾きまくってしまいます。

これもまたビギナーにありがちではありますが、中級者以上になっても、というかある程度の技術がある人の方がいろんな知識があるだけに『弾きまくり症候群』に陥りがちです。

ぜひ、ウェスでもジョーパスでもジュリアンラージでも、有名なプロのアドリブを "弾きまくっているか・否か" という視点でじっくり聴いてみてください。

多くのプロのアドリブは
1:最初はゆったりと始まり、
2:どんどん展開と発展をして、
3:盛り上がっていきます。


最初から最後まで弾きまくっているプロのミュージシャンはおそらく皆無です。

しかし聴く人には(特に楽器を演奏する人には)、盛り上がっているところが強く印象に残るため、いざアドリブを弾くとなるとその盛り上がりを再現しようとしがちです。
盛り上がっている or 特徴的な場面の演奏のイメージでアドリブしてしまうわけです。


演奏時に以下の点を意識すると改善しやすいので参考にしてみてください。
・音符は長めに
・フレーズの合間に一呼吸置く
・フレーズのスキマを多めに & スキマを恐れない
・自分の呼吸とフレーズを合わせる
・コードを全部追わずにところどころ無視したフレージングにする

(【例】D-7 G7 Cmaj7 を G7 Cmaj7 だけと捉える)
・頭の中に浮かんでいないフレーズは極力弾かない(手癖で弾かない)

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【(割と多い)フレーズが着地していない問題】

ガンガンに弾きまくっていなくても、弾きまくっているように聴こえる場合があります。

それは、トニックでフレーズがうまく着地できていない場合です。

フレーズに緩急をつけたり、間(ま)を入れつつ弾いても、適宜コード進行上のトニックでフレーズが着地できて(まとまって)いないと、ズルズルと弾き続けているように聴こえてしまいます。

言葉で言うと終止形(〜です。〜ます。〜でした。〜だ。)がなく、だらだらと一文が長い状態です。

適宜フレーズをまとめつつ展開させていかないと、やはり弾きまくっている印象を受けやすくなってしまうので、『一定のセンテンスでフレーズを解決させる』ことを意識してみてください。



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【NG演奏の条件・その3】基本のバップができていない

これは基本なところではあるのですが、そもそものフレーズがジャズになっていない( =ビバップを理解していない)という問題です。

コードを追えない、リズムが違うなど。

ギタリストの場合は特にロック出身者が多いですが、ロックから抜けきれていないと起きやすい気がします。
(ジャムセッションなんかだと『あーあの人、まだロックっ気が抜けてないねー』などと思われる、、、)

ジャズとロックのアドリブは全くの別物です。
ジャズの語法を理解せずに、なんとなくジャズのアドリブを弾いてしまうと全然ジャズにならないので要注意。

これは基本的なジャズの練習をするしかありません。

自分で自分の演奏を聴いてもわからないと思うので、自信がなかったら誰か上手な人に聴いてもらってアドバイスをもらいましょう。



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【NG演奏の条件・その4】テーマをミスる

テーマをミスると『やらかした!』感が半端なく、あっという間に聴いている人から『下手』の烙印を押されます。

テーマをミスってしまって、無理やりフェイクっぽく誤魔化す!(『あえてちょっとアレンジしたのよ〜』的な)
というのもよく見かけたり(やってしまったり…)しますが、これまた観ている側からすると非常に情けない光景です。

これは中〜上級者でも笑えない(バカにできない)ポイントではないでしょうか。
※私はよくレッスンを受けたときに『テーマをきちんと聴かせられなかったらアドリブは弾く意味がない』と言われました。

テーマは非常に重要です。
上手い人ほどテーマを大事に弾いて、アドリブでもテーマを活かしていたりしますね。

テーマミス、ダメ、ゼッタイ

テーマをきちんと練習しましょう。
(、、、自戒を込めて)



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【NG演奏の条件・その5】リズム感がない

リズム感はめちゃくちゃ大事です。

かっこいいフレーズをコピーしたり作ったりしてアドリブで弾いても、リズムが合ってないと意味がありません。

リズム > フレーズ
と意識した方が良いでしょう。

これまた "ギタリストあるある" というか、ギタリストの特徴ですが、頭に浮かんでいないフレーズが延々と弾けてしまうので、
フレーズ > リズム
となりがちです。

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【リズム感がない?】
カラオケで歌を歌ったりするとそれほどリズムがズレていない。
しかし、ギターを弾くとズレてしまう。

体感としてリズムを理解しているのに(頭の中ではリズムに乗れているのに)、ギターからはリズム感が出てこない場合、おそらく頭と手がバラバラになっています。

ちなみに自分にリズム感があるかどうかは、
1:クリック音やメトロノームを慣らす
2:それに合わせてギターを弾くのではなく口でリズムを歌ったり表現する:『1234、2234』とか『ズンズンタッズンズンタッ』など
3:↑ を録音
4:聴いてみる

でだいたいわかります。
口でリズムを歌ってみて大きくズレてしまう場合は、リズム感がない、と判断して良いでしょう。


リズム感をよくするには、メトロノームに合わせて弾いてみたり、半分のテンポのクリック音に合わせて弾いたりなど、リズム感を鍛えるトレーニングをしましょう。
※詳しい練習方法はいろいろあるのでググってみてください。

で、リズム感を突然に強化するのは大変なので、とりあえず
『なるべく頭の中で歌う。そして頭の中で歌っているフレーズを弾く。手癖では弾かない。』
という点を心がけると良いと思います。



【NG演奏の条件・その6】音がでかい・うるさい・他の人の演奏の邪魔になる

ギタリストの場合、通常はアンプを使用して演奏すると思いますが、
・音がでかい(ボリューム上げすぎ)
・うるさい

のはNGです。

ビギナーに頻繁にありがちで、中級者以上でも割と起こりがち、なポイントだと思います。

ソロがうるさいのはNGだし、他の演奏者のアドリブ中にバックのギターがやかましいのもNGです。
アンプのボリュームを常に意識するしかありません。

アンプの音が聴こえづらいとボリュームを必要以上に上げてしまいがちなので、自分のアンプの音をきちんと聴けるように、置く場所や配置に気をつけると良いと思います。
※アンプの下に何かを置いて、少し傾けて置くと聞き取りやすくなります。

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音量の問題だけではなく、フレーズとか演奏の仕方でうるさいのもNGです。

他の人(楽器)の演奏の邪魔になってはいけません。
これは空気を読まずに、というか、全体のアンサンブルを考えずに弾きまくったりすると発生するNG演奏です。
まわりの音をよく聴くように心がけると◎。

伴奏にギターとピアノがいる場合には(サックス・ギター・ピアノ・ベース・ドラムみたいな編成)ギターは休む(弾かない)など、全体のバランスを考えながら演奏しましょう。



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【NG演奏の条件・その7】アウトしすぎ

ある程度、知識と技術があると起こりやすいのが『アウトしすぎ』演奏。

基本ができていなくて(技術的に未熟で)音を外すのはアウトするのではなくて単純にミスです。
しかし、そこそこ弾ける場合に意図的に音を外して(=アウトして)アドリブにスリリングさを出す場合、あまりやりすぎると、やはりそれもミスと捉えられてしまいます。

割と多い・よく見かけるのが、ジュリアンラージやギラッドヘクセルマンなどの前衛的なギタリストをイメージして盛大にコケる、というパターン。

やはりこの場合も、有名なプロのアドリブを "この視点(アウトの仕方・どのようにアウトしているか)で" じっくり聴いてみてください。
最初から最後までアウトばかりしているギタリストは皆無です。

以前、いろんなギタリストのアドリブを、フレーズや展開の仕方などを中心に分析してまとめたことがあるのですが、想定していたよりも『アウト』な演奏をしていないことに驚きました。
上手いミュージシャンは『イン』でのバリエーションが豊富です。

規則から外した演奏(アウト)をするのは技術と知識が要るので、もしもまだ技術的に発展途上だったり慣れていない場合、確信をもって確実に弾けない場合には、まずは『イン』で上手く弾くのを心がけてみると良いかも。

いろんなプロのアドリブを分析してみるのもオススメです。



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【NG演奏の条件・その8】フレーズに流れと脈絡がない

アドリブでのフレーズはスムーズにつながっていて、きちんと流れがあるのが理想です。
フレーズがきれいにつながっていない、あるいは流れが悪いとあまり上手な演奏に聴こえません。
フレーズは言葉に近いので、あまり支離滅裂だと意味不明に聴こえるわけです。

【流れが悪く聴こえる演奏例】
・覚えた2-5フレーズを無理やりコード進行に沿って連結する
・コード進行に振り回されて、ただただ使えるスケールをなぞる
・頭の中で歌えていない、フレーズとして整理できていないまま、手癖で弾く


以下を意識して演奏すると良いと思います。
1:一つ一つのフレーズに対して、無理やり別のフレーズをつなげない
2:流れを切らない(上がったら下がる・下がったら上がる、など)
3:急激な緩急をつけない(速いメロディーの直後にスローにしたり)
4:スケールをただ上昇下降したり、メカニカルにしすぎない


下から上昇していくフレーズのあとに、また下から上昇。
下降していくフレーズを弾いて、また別のポジションから下降、など、指板のポジションがガタガタしている場合はだいたい流れが悪いです。
※上昇するフレーズが連続するパターン、またはモチーフが発展していくフレーズなどはアリ。


出てきたコード進行に対して、決まったポジションでしか弾けない場合や不得意なポジションがある場合には、どうしてもバタついてしまいます。
コードやキーに対して、いろんなポジションで弾けるようにしておくと良いでしょう。



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【NG演奏の条件・その9】ダイナミクスがない・展開がない

これは上記の『フレーズに流れと脈絡がない』に関連することでもあるのですが、こちらは流れがあまりないケースです。

具体的には
・同じ(得意な)ポジションでのフレーズが続いたりする場合
・展開がない場合(= 平坦で盛り上がりがない)

です。

個人によって得意な・フレージングがしやすいポジションがあるので(9〜12フレット付近が多い気がします)、アドリブが始まると無意識に同じポジション付近で弾き続けてしまったりします。

つまり、指板を狭く使ってしまう、ということです。

プロの方の演奏やCDを聴くと、指板上を大きく移動しながら(広く使って)演奏しています。

指板が狭く使う = フレージングや展開に幅がない = つまらない
ということになるので、いろんなフレージングができるように練習してみるのをオススメします。

あわせて、フレージングだけではなく、音の強弱やメリハリという意味でのダイナミクスも大事です。
バラードなのに曲調を無視して強く弾いたり、きれいなコードを雑に鳴らしたり、など。
自分の演奏だけではなく、全体の演奏をよく聴いて演奏するように意識をすると良いです。


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アドリブの展開は、いわば "起承転結"などの『ストーリー展開』です。

具体的に "展開がない" とは ─
・ずっと同じテンションでのフレーズ(演奏)
・似たようなフレーズばかり
・発展していかない
・最初に盛り上がって徐々に盛り下がる(ある意味、展開はしているがテンションダウンしていくと『展開性が悪い』と捉えられる)


アドリブの展開については、よく言われることですが(上でも少し触れていますが)
・初めはゆったり始まって、徐々に盛り上がっていく
という点を意識すると良いと思います。

また、"展開"・"展開の仕方" を意識していろんなプロのアドリブを研究してみるのもオススメです。
※具体的な展開については別の記事で書く予定です。

一例ですが、以下のような演奏で展開(発展)をさせることができるので参考にしてください。
・フレーズのスピードをあげる
・シンプルなパターンフレーズの利用とその複雑化
・音数を増やす
・単音から和音に(1音→2音(ダブルストップ)、あるいは1音→コード、など)



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【NG演奏の条件・その10】曲を踏まえていない

どんな曲でも同じようなアドリブをしてしまう問題です。

覚えた2-5フレーズをただただ弾いていたりすると、どの曲でもアドリブが始まった瞬間に似たような演奏になってしまいます。

曲を理解して、曲のイメージや背景を想起させる演奏をするのが理想ですが、、、
ジャズの場合はどうしてもこの現象が起きてしまうのも事実(プロのミュージシャンでも弾きわけるのはなかなか難しいと思います)。

テーマをモチーフにして発展させたり、テーマのリズムを応用したりなど、テーマを活かしたアドリブを心がけると良いと思います。




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まとめ

というわけで、下手に聴こえてしまうNGな演奏をいろいろと挙げてみました。

こうしてまとめるとNGなことばかりに見えますが、NGな演奏をしないために意識するポイントには共通している点があります。
それは、
・周りの音をよく聴く
・全体の調和とアンサンブルを意識し、ひとりよがりな演奏をしない
・基本的なジャズのスタイルは大事にする
・手癖で適当に弾かず、きちんとフレージングする(歌う)
・アドリブでは一つ一つの音使いも大事だけど、全体として構成や展開も大事

といったこと。
どれもジャズを演奏するにあたって非常に重要なポイントです。

要するに、これらの重要な共通点を意識すれば、それぞれのNGな演奏は発生しづらくなるということになります。

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偉そうに書きましたが、私(肉じゃぎの管理人)も完璧に弾けるわけではありません。
『どうやったら上手に弾けるだろう?』という試行錯誤の末に『上手い演奏の言語化も必要だけど、NGな演奏の言語化も必要だ※』と考え、意識するようにしている次第です。
※抽象的な理解のままだと意識しづらく、演奏に反映しづらいため。

良い演奏をするためには、良い演奏のイメージとNGな演奏、両方の意識が必要です。

良い演奏をしてジャズが楽しくなる参考にしていただければ幸いです。


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