インタビュー - ジャズマンに訊く

はじめに

ジャズミュージシャンにインタビューする企画『ジャズマンに訊く』の第三弾です。
今回はジャズギタリストの成瀬明さんにいろいろお話を聞かせていただきました。

私(肉じゃぎの管理人)はピーター・バーンスタイン(Peter Bernstein)が大好きなのですが、何年も前からYouTubeで頻繁に『Peter Bernstein』で検索して新作動画を探すのが日課のようになっていました。
そこで検索結果にちょこちょこと出てきていたのが成瀬さんの動画だったのです。
その動画では成瀬さんがピーターのアドリブのコピー演奏をしていて、『日本にこんなピーター好きの人がいるのか!?』と驚くとともに密かにライバルのように思わざるをえませんでした。

2022年3月の某日、金沢の『もっきりや』で成瀬さんがライブをすることを知り、「あの成瀬さんか!」とライブを観に行くことに。

ピーター・バーンスタインのスタイルをうまく消化しつつもオーソドックスなジャズギターらしいプレイも垣間見えたりと、その素晴らしい演奏に感動してしまいました。
ライブ後にお話をさせていただいたら、初対面とは思えないほどピーターの話題で大盛り上がりに…。
ライバルどころか『ピーター仲間』に出会えたかのような感動の瞬間でした。

そこでの接点から、同じ『ピーター好き』として今回インタビューさせていただくことになりました。
上達のコツやオススメの音源などいろいろとお話をうかがったので、ぜひ参考にご覧ください。

※インタビューは2022年4月に行われました。



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成瀬明さんインタビュー【前編】

【公式サイトより】
成瀬明さんプロフィール

1987年12月生まれ。愛知県津島市出身。
16歳からギターを始め、高校卒業後『MI JAPAN名古屋校』に入学。
Keith Wyatt、Allen Hinds、Kai Kurosawaなどのアーティストとセッションし、様々なジャンルの音楽を経験する。
MI JAPAN卒業後は、シンガーソングライター伊太地山伝兵衛の全国ツアーに参加する。
現在は、愛知県を中心に全国各地で様々なミュージシャンとライブ活動やセッションを行なっている。
2016年7月、砂掛康浩と共にライブレコーディングしたギターデュオのCD「Akira Naruse meets Yasuhiro Sakake」をリリース。


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ギターをはじめたきっかけ、ジャズをはじめたきっかけ

ギターを始めたきっかけは何ですか?

僕が楽器をはじめたのは高校生のときなんですけど、それ以前には楽器とかやったことがなくて。
僕の誕生日が12月16日なんですけど、高校1年の時かな。
その時まだ親から誕生日のプレゼントをもらっていたんですよ。
あの、雑誌の裏の通販の欄があるじゃないですか。ちょっと怪しい感じがする広告というか。
あれでアコギか何かを買ったのが一番最初ですね。
メーカーは忘れちゃったんですけど、アコギで。
何か教則本みたいなペラペラのやつ(冊子)が付いてくるやつでした。

ギターをやろうと思ったきっかけは単純に友達がやっていたからですね。
やっぱりかっこいいじゃないですか。
ちょうどその頃って歌番組とかいろいろやっていて、Mステとかそういうのでいろんなバンドが出てたりして。
だいたいバンドっていうとギター、ドラム、ベース、キーボード、ってそんな感じじゃないですか。
それでその中からなんとなくギターに魅かれたっていう感じですかね。

友達も持ってたし通販で買って弾いてみようって高校1年生の冬ですね。

それで、実は1回辞めてるんですよ。全然弾けなくて。
もう全然弾けないというか、チューニングの仕方もわからないから。
GとかCとか教則本に載ってるコードとかを弾いてみたんですけど、全然ダメで。

それで1回辞めてて、なのになぜか高校2年生の誕生日に『今度はエレキギターを買えばいいんじゃないか』って考えて。
で、そこから本格的に始まりました。

その時(高校2年生)にスクワイアのストラトか何かを買いましたね。
そんなに高いギターではないですね。
最初はそんな感じでした。

好きなバンドやミュージシャンはいましたか?

その当時は『L'Arc〜en〜Ciel』とか流行っていましたね。
そのころにプレイステーションのゲームで『トマラルク※』っていうゲームがあったんですよ。
そのゲームをやっていると L'Arc〜en〜Ciel の曲が流れてくるんですけど、それを友達の家でやっていたりして。
※正式名:激突トマラルク

その友達がギターを持っているっていうこともあったんですけどね。

あとは僕の世代だと『ゆず』とかそういったミュージシャンが流行っていました。
今でも活躍されてますね。


【参考】激突トマラルク

【参考】激突トマラルク


ジャズを演奏するようになったきっかけはなんですか?

話すとちょっとややこしいんですけど、そもそも最初は自分からジャズをやりたいと思っていなかったというか。

僕は高校生の時にギターを始めて、それでなぜか『自分は絶対にプロになる』って思っていたんですよね。
おかしな話なんですけど、ギターを始めた時にプロになれると確信していたんですよ。
そんなわけないのに。

それで、学校の勉強をしなくなって楽器の練習ばかりしていたんです。

そんな高校生活を送って、そのあと音楽の専門学校に行ったんですよ。
エムアイジャパン(MI JAPAN)っていう、今は東京と大阪ぐらいにあるのかな。当時は名古屋にもあったんですけど。
そこに高校卒業してから通ったんですが、そこで教えている先生がみんなジャズをやっていて。

それでまぁパワハラっていうほどでもないけど、先生から『ライブをやるから来い!』って言われたりするじゃないですか(笑。
昔はそんなノリもOKだったので。今もあるのかもしれないですけど。
そんな感じで見に行くと、そのライブがジャズだったんですよ。

で、『ジャズをやるとお金になるよ』みたいなこと言われて。

その頃になると、バンドで売れるのは結構難しいと思い始めていて。
何とか楽器を弾いてご飯を食べて行きたいな、みたいなことを思っていたんですよね。
そんな時に『ジャズを弾くとお金を稼げる』っていう話を聞いて、それで興味が湧いたみたいな。
だから不純な動機なんです(笑。

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ジャズをはじめたきっかけで言うと、ギターがフロントになる音楽って知らなかったんですよね。
例えばフュージョンとかそういう音楽ってギターがメロディーを弾いて音楽が成立しているじゃないですか。
そういうインストルメンタルって言うジャンル自体をそもそも知らなかったんです。

ジャズってインストルメンタルの割合が大きいですよね。
CDコーナーに行ってもボーカル物の方が少なかったりして。
それでそういうインストルメンタルっていうものを知って、ギターで表現できる音楽があるんだって言うのを知ったのがきっかけでもありますね。

まぁ、あとは単純にジャズって難しいじゃないですか。
ハーモニーにしてもリズムにしても、いろいろとすごく難しいから。
それで、ギターが上手くなりたいと思ったというか、ジャズができたら何でもできるんじゃないかって思ったんですよね。
そのあたりもジャズをやりたいって思ったきっかけですね。
ざっくりとした理由なんですけど…。

だから勉強のためにジャズをはじめたところがあります。

専門学校の先生達が仕事として演奏していた、というか、そういうことをしている人が身近にいたので。
演奏をしてお金を得るということを現実的に感じましたね。
バンドで売れてるっていう人の方が身近にいなかったので。

そういうわけで、自分がジャズをはじめたきっかけって『すごくジャズが好きでジャズのレコードを聴いて衝撃を受けて〜』とかってそういう感じではなくて。
ちょっとかっこいい理由ではないかもしれないですね。

ジャズを勉強しようと思ってからは、いろんな音源を聴いたりして『すげー!』みたいな感じでハマっていくっていうことはあったんですけどね。



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ジャムセッションで学んだジャズ

ジャズに興味を持ってからは、専門学校に『ジャムセッションに行こう』って誘ってくれる先輩がいて。
それでジャズのセッションに行きはじめて、それでジャズを覚えた人間なんですよ、僕は。
セッションに二十歳の時に初めて行ったんですけど、それはもう専門学校に入ってから2年ぐらい経った頃のことでした。

専門学校でジャズっぽいことはやっていたんですけど。
当時はファンクとかフュージョンとかブルースとか、そっちの方が主体で。
学校でやってたことはそちらの方が中心だったので、ジャズはジャムセッションで覚えたんですよ。

音楽理論とかそういった下地はあったんですけど、でも、例えば曲を知ってるとかそういうことがジャズをやる上ではすごく重要じゃないですか。
でもジャズの曲とか全然知らなくて。

名古屋でのセッションっていうと、ジャズのセッションが多いんですよ。
当時は青い本が主流で、今みんながよく持ってる黒本じゃなくて。
青い本を買って、それを持ってセッションに行ってましたね。

ジャムセッションってそもそも『ワン・ツー・スリー・フォー・・』って始まらないじゃないですか。
イントロみたいなのを誰かが弾き出してそれではじまったり、いろいろエンディングとかもあったり。
僕はイントロもエンディングの存在も知らなかったので。
だから全然足りなかったっていう感じです。
実際にセッションに行って勉強したっていう感じですね。

ジャムセッションに参加するようになってから、どんどん弾けるようになったという感じですか?

ジャズって暗黙の了解みたいなものがいろいろあるじゃないですか。
だからセッションが終わってから周りの人に聞きましたね。
大人の人っていうか、当時僕より大人な人でジャズに慣れてるような人に。
『最初に弾いてたのって何ですか?』とか。

例えば今でこそ普通ですけど、イントロで5度をペダルにしてsus4で弾いて曲に入るやつとか、『あれってどういうのをやってたんですか?』とか聞いて。
で、『そういうのがあるんだなー』とか。
わからないところを周りの人に聞いたりしながら、それでいろいろ勉強していたって感じですね。



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いちばん最初に買ったジャズのCDは覚えていますか?

ジョージ・ベンソン(George Benson)のライブ盤のアルバムを買いました。

歌ものから始まるやつで、もう1回聴いてみようと思って探してみたんですけどなかったんですけどね。
具体的に何のアルバムだったのか確認できないんですけどジョージ・ベンソンってライブ盤がいっぱい出てるので、それがまず一番最初に買ったCDです。

ジョージ・ベンソンのフュージョンの曲を学校でやる機会があったんですよ。
何の曲か覚えてないんですけど。
だから一応知ってる人の音源っていうことで買って。

ジョージ・ベンソンはジャズの人だっていうこと言われたので、それで買ったんですけど。
でも1曲目〜2曲目と聴いていっても歌しか歌ってなくて。
しかもむちゃくちゃファンクだし。
全然ジャズじゃねー!!』って感じだったんですよ(笑。

買って失敗したなー、っていう感じでした。
ジョージ・ベンソンは買うアルバムを選ばないと痛い目に合う人かもしれないですよね。
それでグラント・グリーン(Grant Green)の『Green Street』っていうけっこう有名なアルバムを買いましたね。

たしかその時に、学校にギターの先生がいて、その先生に『いやー、ジョージ・ベンソンのCDを買ったんですけど全然ジャズじゃなくて。普通の4ビートとかやってるジャズのCDってないんですか?』って聞いたらいろいろ教えてもらって。
教えてもらった中でちょうどCD屋にあったのが、そのグラント・グリーンのCDだったんですよね。

もういろいろつまづいちゃってますね、最初の頃から(笑。


もっきりや(@金沢市)でのライブより



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機材について

いまメインで使っているギターについて教えてください。

Gibson のES-175で、正式には『ES-175 1959 VOS』だったかな。
メンフィスで作られてるやつですね。
シリアルナンバーを見るとおそらく2000年前半の製造だったはずなんですけど。

これは貰い物ですね。

いわゆるギター好きの方が、自分で持っていたギターを弾いてほしいって言って。
で『貸してあげる』って言われたんです。
それでギターを借りてたんですけど、傷をつけたりするのが怖いから弾いてなかったんですよ。
その方がライブに来た時に『なんで貸してあげたギターを弾かないの?』って言われて。
『傷つけるの嫌だから』とか言ってたら、『じゃあ、あげるから弾いて』って言われて。

なかなか他では聞かない話ですね。

珍しいケースかもしれないですね(笑。

僕は名古屋に住んでるんですけど、名古屋って箱もののギターを売ってる楽器屋が少ないんですよ。
まぁ一応、中古楽器屋とかもないことはないんですけど。
で、なんとなくいろんなギターは弾いてはいたんですけど、なかなかいいのがなくて。

自分で買ったギターっていうのは、当時22歳の、それも自分の誕生日に買ったやつなんですけど。
なんか誕生日に楽器を買うクセがありますね(笑。
その時は何だったかな…?

僕は22歳の10月からあるアーティストの方とツアーをしていたんですよ。
そのアーティストの名前は伊太地山伝兵衛っていう方で。
ツアーで一緒に周っているミュージシャンもいて、ピアノの佐山雅弘さんとか。あとはドラムのポンタ(村上 “ポンタ” 秀一)さんとか。あとは近藤房之助さんとか。
伊太地山さんはそういった人達と一緒にやってるような人だったんです。
あ、佐山さんやポンタさんは一緒にツアーに同行しているミュージシャンだったので、僕がそのバンドで演奏したっていうことではないですけど。

フロントはその伊太地山伝兵衛さんで。
一緒にサポートメンバーとしてツアーして周ったんですよね。

そのツアー中、僕は人から借りたギターを弾いてて。
本当にまともな楽器がなくて、そのツアーに行くのが決まった時に『ツアーに行く時に楽器どうしたらいいですか?』って伝兵衛さんに聞いたら『やっぱりフルアコがいいんじゃない?』とか言われて。
で、その時ストラトしか持ってなかったので。

当時、ジャムセッションもストラトを持って行ってたんですよ。

『楽器が無いしなぁ』と思って悩んでいたら、ベーシストの人からギター持ってるから貸してあげるって言われて。
それで借りて弾いてたんですよ。
あとは(専門学校の)先生が持ってるギターを借りてツアーに行ったりとかもしていて…。
そんなことをしていたら、自分の中で『ちょっとまずいな』ってなって。
さすがにそろそろ楽器を買わなきゃいけないな、って思いはじめました。

楽器を買いに行く

それで渋谷のWalkin' に行ったんですよ。

当時、全然お金を持ってなくて。
23万円ぐらいしか貯金がなかったんですよ。

楽器屋の中に入るとギブソンとか置いてあるんですけど、どれも高いんですよね。50万とか60万とか…。
GibsonのL-5とか、100万円くらいで売られてたかな。

で、当時買えそうだったのが D'Aquisto(ダキスト)のジャズラインっていう、ジム・ホール(Jim Hall)が使っていたギターのレプリカがあって。
もう今では生産中止になったらしいんですけど。
それと、あとは Heritage の H575 っていうES-175みたいなモデルがあるんですよね。

ES-175と違うところはメイプルのトップが単板なのと、あとは板がちょっと薄いっていうところですかね。鳴り方はES-175と全然違うんですけど。
その時、23万しか持ってなかったから、そのどちらかしか選べなくて。
それでHeritage のやつを買いました。
買ってからずっと10年ぐらい弾いていて。今でもそれは持ってるんですけど。
それで、今のメインのギターをくれた人に出会って『これ弾いてくれ』って言われて。

『はっ、ES-175だ!』
『憧れの、あの当時は買えなかったギターだ』

みたいな (笑。

なぜ今の(貰った)ギターがメインギターになったかって言うと、すごく軽いんですよね。1ピックアップで。

僕は『ギターは軽いは正義』と思っている人間なので、レスポールとか重いギターが弾けないんですよね。
なんか、重くて持っているだけでしんどいし疲れちゃうっていうのがあるので。

いまのメインのGibson ES-175はすごく軽いんですよ。
もうオモチャみたいな軽さで。そこがいいなって。音も気に入ってるんですけど。
16インチって小振りじゃないですか。
以前に買ったHeritageのやつとかも16インチであんまり大きさも変わらないし、まぁ厚さはES-175の方がちょっとあるんですけど。
それもあって抱えやすくていいなっていうので。

それでメインになってしまったという感じですね。

アンプはどんなものを使っていますか?

あんまりアンプにはこだわりがなくて。
仕事で困るからビンゴ(= AER BINGO)を持ってるのと、あとはLunchBox Jr.っていうのを持ってますね。
去年(2021年)の末ぐらいに2万円ぐらいで買ったんですけど。
それがめちゃくちゃ優秀ですね

LunchBox Jr. はリバーブがないですが、リバーブがなくでも不便ではないですか?

そうなんですよね。

以前は僕もリバーブがないとダメだったんですけど、3年ぐらい前に中牟礼貞則さんと初めて共演する機会があって。
その時に中牟礼さんがポリトーンのベイビーブルートっていう結構レアなモデルで、めちゃくちゃ小さいアンプを持ってたんですよ。
それで共演したときにリハーサルをして、いろいろ機材とか気になったので見させてもらって。

その時に強く覚えているのが、機材を見せてもらった時に『こんな小さいアンプがあるんですね』とか『小さいのにリバーブがついてるんですね』って言ったら、中牟礼さんが『でも外しちゃった』みたいなこと言っていて。『どうしてですか?』って聞いたら『だってリバーブがあると歌謡曲みたいじゃん』なんて言ってたんですよ。

『いやぁ、そんなことないんじゃないかな』とも思いながら、自分的に中牟礼さんって普通に好きでファンだったので、『そうか』と思って。
それを聞いて、自分の持ってたアンプのリバーブを0(ゼロ)にしましたね、スッと(笑。

それでそこからはリバーブは使わなくなったというか。

自分の場合はアンプって割と何でもよかったんですよね。
スピーカーはでかいほうがいいなとは思ってるんですけど。
特に根拠があるわけじゃないんですが、なんとなく余力がある感じがして良いなと思っていて。

あとはアンプのイコライザーとギターのトーンとボリュームで、自分の好みの音ってだいたい近づけられるんじゃないですか。
だからどのアンプを使ってもだいたい似たようなことにはなるんですよね。
だからあんまりアンプってどれでも問題ないというか。

そんなこともあって、そのLunchBox Jr.ってトーンとゲインとボリュームしか付いてないんですけど、それで全然問題なくて大丈夫ですね。

苦手なアンプ

逆にダメなアンプというか苦手なアンプってのがあるんですけど。
いわゆるデジタル系のアンプです。

偏見かもしれないんですけど、アンプのパネルがあるじゃないですか。
ボリュームとかついてる、あのパネルがいっぱい光るやつがダメなんですよ。
LEDとかいっぱいあるやつ。
光が出たりパカパカ点滅するようなアンプがあると思うんですけど。

デジタルってワット数が一緒のはずなのに音がペッタンコっていうか。
こうじゃない感じっていう音がするイメージがあって。
だからそういうのは苦手ですね。

それだったらベースアンプでもいいし、リバーブもなくてもいいし。
まぁ個人的にはですよ。

ちょっとコンテンポラリーなことをやりたいなとか、あと今はポップスのバンドのサポートとかをやったりもしてるんですけど。
そういう場合はガンガンにエフェクターとか並べるし。
オーソドックスなジャズで演る場合に限定して考えるとシンプルでいいんですけど、場面に応じて臨機応変にやるっていう感じですね。


成瀬さんのメインギター:ES-175



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サウンドメインキングについて

実際の音づくりの面、サウンドメインキングについてのこだわっている部分などはありますか?

アンプに関しては、できれば真空管がいいかなっていう感じですね。
昔、ブルースジュニア(Fender Blues Jr.)っていうアンプも持っていて、それを持ち歩いてたんですけど。
ブルースジュニアは好きなアンプだったんですけど、持ち歩くと壊れちゃうんですよね。真空管アンプって。
だから真空管アンプは持ち歩くもんじゃないなということで。
ライブをやるお店とか会場にあったらラッキーみたいな、そんな感覚でやってますね。

イコライザーとかは、これも人それぞれだとは思うんですけど…。
まず、自分的にはそのハコにあった音量を目指すんですよね。編成も考慮して。

例えば、最初に気をつけることとしてはベースをすごく気をつけるようにしていて。
低音が回らないようにするというか。
だけど単音とか他の音を弾いた時にベースがなくならないように、っていう。
そういうところから基本的なセッティングを始めるんですよね。

あとは編成によって、例えばピアノとベースのトリオとかそういった場合には音が固くならないようにっていう感じですかね。
例えばドラムが入ったりとかした場合だと、同じような音作りだと逆に抜けなくなったりするので。
そこで、『抜けないな』と思った時にはちょっと中域だけ足す、みたいな感じでやってますね。

基本的には低音が回らないようにして、耳が痛くないようにして、それで中域を上げると。

僕的には中域を上げると、どんどん『リッチ』なサウンドになっていっちゃうような気がしていて。
中域ってなんというかエレキっぽくなっちゃうんですよね。ちょっと不自然というか。
僕は中域を上げた音があんまり好きじゃなくて、まんべんなく鳴って綺麗になってて欲しいんですよ。
楽器の生音自体をアンプから出すみたいな。

中域をあんまり上げすぎると違和感が出ちゃう気がしているので、はじめに低域から高域とやって、最後に中域を調整するみたいな調整です。
ドラムが入ったり管楽器が入ったりとか、あとは大きなお店でバーンとやったりするときは、個人的にはあんまり好きじゃ無いけどそこにちょっとだけ中域を足すっていう感じでやってますね。
そんな感じで音を作っています。



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ジャズを演奏するときに心がけていること

ライブなどでジャズ演奏するときに心掛けていることや意識していることはありますか?

そうですね…。なるべくチャレンジするようにしていますね。

シチュエーションはいろいろあると思うんですけど、例えばライブだったとしたらチャレンジして、逆にレコーディングだったらあんまりチャレンジしないようにして。人に迷惑がかかっちゃうので。
ジャズのライブに限ったことで言うと、なるべく『チャレンジする』っていう。

チャレンジっていうのは、例えば演奏中に何か思いついたことがあるじゃないですか。
その思いついたことをなるべくやるっていう風にしていて。

で、失敗するっていう(笑。

僕の場合は、思いついたことをやるんですよ。
で、やって失敗するんですけど。
たまに上手くいくんですけどね。それでいい良い気分になって。
なので、なるべくそういうのは大事にしたりとか。

あとは、なるべく『オープンな心でいる』っていうか。
それはライブとかで共演者がいる時になるんですけど、例えば、自分の好みじゃないベースの人とかドラムの人とか出てきちゃうじゃないですか。演奏する曲に対するイメージが違うとか、『この曲はこういう風にやるべき』みたいなのをそれぞれ持っていて。
例えば『Stella by Starlight』を演るとしたら、人によってそれぞれイメージが違っていて、スローでやる人もいたりアップテンポで演奏する人もいたりして。
で、自由にいろいろやっていいはずなのにあんまりそんなふうに、自由になれないことがあるじゃないですか。
いろいろ準備して行くと『あれ、そうじゃなかった』みたいに。拍子抜けしちゃうみたいな。

だから『どうなってもいいや』っていうような気持ちで演る、みたいな感じですかね。

自分の予期しないテンポで始まったりとか、まぁ全然そんなことはあるんですけど。
でもそれを受け入れるっていうか、そういうことに対してすごくオープンでいるっていうか。
単純にテンポ感だけじゃなくて、ハーモニーの場合などでもですね。
『ここってメジャーなはずなのに、マイナー弾いてるわ』とか。
でもその人はそういう風に思ってるんだから、じゃあそっちでやった方が正解だよね、みたいなオープンな心でいると。

なるべく柔軟な姿勢で演奏に臨むという感じですか?

そうですね。

そうするとけっこう楽しめるというか。
あんまり準備して行くといろいろマイナスになっちゃうじゃないですか。
あらかじめいろいろ理想を決めて行っちゃうと、全然そうじゃない、みたいなことがあるので。

あんまりそういうふうに決めつけずに演奏に臨む、と。
『なんか面白くできたらいいなぁ』みたいな感じで。

『めっちゃズレてる!』みたいな場合も、『うわー、どうしようコレ』みたいな感じで楽しむというか、いわゆる『フリー』な方がいいかなって、そんな感じでやってますね。



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上達のコツ

ジャズギターが上達するためのコツはありますか?

僕は専門学校に通っている時からそうだったんですけど、『できない』って言わないようにしてるんです。
なんとかする、というか。
難しいこととかを振られても『できます!』って嘘をついて演奏する、みたいな(笑。

嘘をついてやったとして、できなかったとしても死にはしないので。
やってみて肌に合わなかったらやめればいいし、という感じで。

だから練習もそうですね。
いろいろ練習の計画を組み立てて〜、みたいなやり方があるじゃないですか。
僕はそういうのをまったくやっていなくて、実は。
昔からそうで、性格なのかもしれないんですけど、練習に関してはもうマイブームだけをひたすらやるっていう方法ですね。

あとはその時の自分ができないことをやる、みたいな感じでやってます。
マイブームなことってめちゃくちゃ楽しいんですよね。集中できるというか。

いまのマイブームで言うと、チャーリー・パーカーのリフ(※)なんですけど。
ちょっとうろ覚えだった曲とかをやったりして。
【※編集注】チャーリー・パーカーの曲を普通に弾くこと、とのことです。

演奏する曲は特に決まっていなくて、ちょっとしたキッカケでいいんですけどね。
Twitter で見かけるニューヨークのミュージシャンなんかが『これ覚えとかないとダメだよね』って『Shaw 'Nuff』っていう曲のことを言ってるのを見て。
それで『Shaw 'Nuff』ってなんだっけ?って思って。
『じゃあニューヨークに行った時のために練習しておこう』みたいな感じで。

あと、YouTubeでいろいろなセッションをやってたりするじゃないですか。マイク・モレノ(Mike Moreno)がいろんな人とデュオで演奏してたりして。
『すげー、こんな曲を覚えてるんだ!』って思ったらその曲に取り組んでみたりとか。
あんまり決めてやらないと言うか、決めて練習したことはなくて。
その時々で目標はあるんですけど。
よく例えばクロマチック練習とかあるじゃないですか。毎日クロマチックの練習をやる、みたいな。
僕は本当にそういうのをまったくやってないんですよね。
できることをやっても時間の無駄って思ってるところもあって。

マイブームなことは毎日あるんですけど、演奏できるようになったらもうやらないっていう。
で、次のマイブームが来たらまたそれをやる、っていうやり方ですね。
やっぱりマイブームなことって取り組んでいて集中できるんですよ。
楽しいし。

だから、『そういう“ひたすらマイブームなことに取り組むやり方”の方がためになるんじゃないか説』っていう感じで思ってやってますね。

後半へ続く

後半はこちら



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