クリフォード・ブラウンのインタビューを翻訳してみた / "The Willis Conover Clifford Brown Interview"より
動画 < ジャズギター研究所

Clifford Brown
クリフォード・ブラウンは25歳と若くして不慮の自動車事故で亡くなってしまった天才トランペットプレイヤーです。
私はギタリストですがクリフォード・ブラウンの演奏が大好きで、彼のアルバムを聴くことが多いです。
単純にリスニングな時もありますが、いわば『学習』的な目的で演奏から学ぶこともたくさんあります。
今回は、クリフォード・ブラウンのインタビュー動画
"The Willis Conover Clifford Brown Interview"(一番下に動画あります)
より、クリフォード・ブラウンのインタビューを翻訳文字起こししてみました。
貴重なクリフォード・ブラウンの言葉です。
ぜひ参考にご覧ください。
※聞き取りづらい箇所のミスや微妙なニュアンス違いはあるかもしれません。ご了承ください。
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Clifford Brown(クリフォード・ブラウン) / トランペット奏者
クリフォード・ブラウン(Clifford Brown、1930年10月30日 - 1956年6月26日)は、アメリカ合衆国出身の黒人ジャズ・トランペット奏者である。ハード・バップ期初期のプレイヤーであり、生前「ブラウニー」の愛称で親しまれていた。録音作品で言えば実質的には5年にも満たない短い活動期間ながら、類稀なる優れた演奏を数多く残したことでジャズの歴史にその名を刻んでいる。
彼の高度なテクニックと豊かな音色はチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーら一流のミュージシャンから高い評価を受け、「ファッツ・ナヴァロの再来」とも呼ばれた。また当時のジャズ界に蔓延していた酒やドラッグには一切手を付けず、品行方正で誠実な人柄であったとも言われている。自動車事故の巻き添えにより25歳で急逝。
【インタビュアー】
Willis Conover(ウィリス・コノヴァー) / ラジオパーソナリティ
ウィリス・クラーク・コノーヴァー・ジュニア(1920年12月18日-1996年5月17日)は、ジャズ・プロデューサーであり、40年以上にわたってヴォイス・オブ・アメリカで放送を担当。ホワイトハウス、ニューポート・ジャズ・フェスティバル、映画やテレビでのジャズ・コンサートをプロデュース。あらゆる人種を歓迎するコンサートを企画し、ワシントンD.C.のナイトクラブの人種差別撤廃に貢献した。コノーヴァーは、冷戦時代に毎晩の放送を通じて、東欧諸国でジャズへの関心を維持し続けたことでも知られている。
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Clifford Brown
彼もすごく上手いですよ。
でも、まあ、結局のところフレージングとか好みの問題だと思う。
ディジーは本当にテクニシャンでね、彼ほど技術的にインスパイアされた演奏は、たぶん自分はしていないかな。
Willis Conover
では、マイルス・デイヴィスとあなたを比べると?
Clifford Brown
マイルスはとてもリラックスしたスタイルで演奏します。
それはほとんど…そうですね、ある意味では真似しやすい方向性だと言えるかもしれません。
というのも、そんなにたくさんの音を詰め込まないんだけど、その少ない音がすごく洗練されていて、しかもスウィングしてるんです。
Willis Conover
ファッツ・ナヴァロについてはどうでしょう?
彼のレコードはよく聴いていましたか?
Clifford Brown
はい。
ファッツは結構聴きましたね。
ファッツのことは本当に尊敬してたし、今でも彼は世界でも最高のトランペット奏者の一人だったと思っています。
Willis Conover
他に優れたトランペット奏者を挙げるとしたら誰になりますか?
Clifford Brown
まあ、もちろん、いわば“ポップスの父”・ルイ・アームストロングです。
それから、ロイ・エルドリッジもとても高く評価していますよ。
ただ、彼の演奏はあまり聴く機会がありませんでした。
実際のところ、生で彼の演奏を聴いたことは一度もないんです。
でも、私が最初に聴いたトランペット奏者のレコードの一つ、つまり、トランペット奏者として本当にじっくり聴いた最初のレコードが、ロイ・エルドリッジの『Let Me Off Uptown』だったと思います。
それを聴いてすごくインスパイアされたんですよ。
Willis Conover
でも、現代のトランペット演奏では、昔のジャズマンたちの演奏と比べて、ビブラートがかなり少なくなっていますよね。
昔のジャズではビブラートがとても目立っていたのに、今のジャズではあまり使われなくなった。
どうしてだと思いますか?
Clifford Brown
そうですね、、
一番わかりやすい説明をすると、昔は音の終わりにビブラートをたっぷり入れて、ほとんど「小さな揺れ」みたいに聴こえるくらいだったんです。
それがとても暖かい雰囲気を生み出していたんです。
でもその「暖かさ」って、今で言うところの「ホット」な感じに近かったと思う。
一方で、モダンジャズはそこまで「ホット」ではないんです。
かといって「クール」ってわけでもない。
ちょうどその中間、バランスの取れたもの(=ハッピー・ミディアム)なんですよ。
Willis Conover
でも、現代のジャズには感情が欠けているとは言えませんよね?
Clifford Brown
それは絶対にありません。
ただ、感情の表現の仕方が違うだけだと思います。
おそらく言えるのは、感情を1つか2つの音に込めるわけではない、ということ。
1つか2つの音のフレージングだけで表現するのではなく、全体を通して感じられるものなんです。
演奏する音、アイデア、テクニックを組み合わせることで、昔のジャズにあった温かみと同じようなものを生み出すことができるんだと思います。
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Willis Conover
では、ブラウニー、たくさんの音をクリエイティブに、しかも正確に鳴らすことの技術的な難しさについて聞かせてください。
Clifford Brown
それはなかなか難しい質問ですね。
特にトランペットでは、楽器の全音域をカバーするのが非常に難しいんです。そのためには、リップスラーやシャドウなどの練習を、いわば楽器の最低音から最高音までしっかりと行う必要があります。
それに、現代のトランペットは音域が非常に広いので、最低音から最高音まで自在に演奏することは並大抵のことではありません。ディジー(・ガレスピー)や私をはじめ、みんながそれを完全にマスターしようと日々取り組んでいるところです。
Willis Conover
トランペットを始めたばかりの頃は、1日にどれくらい練習していましたか? それが職業になるってはっきり決める前の話です。
Clifford Brown
そうですね、だいたい毎日2時間くらいは練習してたと思う。
一番重要なのは、一日も欠かさなかったことだと思います。
たとえ練習時間を短くしなければならない日があっても、毎日必ず練習していました。
Willis Conover
まあ今は、ステージで毎日3~4時間は演奏できるわけで、それ自体がある意味、練習にもなっていると思います。
でも、仕事の前に別で練習することもありますか?
Clifford Brown
トランペット奏者にとって、演奏を始める前にしっかりとウォームアップすることはとても重要です。
そして、毎晩継続して演奏しているとしても、それだけでは十分とは言えないと感じています。
もちろん、演奏の仕事がないときでも、練習を続けることがとても大切です。
そうしないと、仕事をしているときや練習しているときに積み上げたものをキープできなくなってしまいますから。
Willis Conover
それは技術的な部分をカバーしていますが、創造的な観点から見るとどうでしょうか?
即興演奏をする際にはメロディーを意識していますか?
それともハーモニーを意識していますか?
Clifford Brown
そうですね。
まず言いたいのは、私たちが今日演奏しようとしているジャズにおいては、コード進行を完全に理解することが非常に重要だということです。
特定の曲を演奏するとき、その曲には特定のコード進行があります。
それをしっかりと把握し、まるで前後逆にしても分かるくらいに熟知しているべきです。
コードチェンジを完全に理解していれば、自由度がぐっと増します。
つまり、基本的なコード進行に沿って演奏するだけでなく、コードの変化を理解することで、耳で自然にフレーズを感じ取れるようになるんですよ。
Willis Conover
ブラウニー、今日は本当にありがとう。
素晴らしいレコードをたくさん残してくれて感謝しているよ。
これからのキャリアがさらに素晴らしいものになることは、言うまでもないですね。
Clifford Brown
うん、僕もそう願ってるよ。本当に光栄だった。ありがとう。
Willis Conover
クリフォード・ブラウンでした。
(終)
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