番外編 < ジャズギター研究所

当記事ではジャズでのアドリブスキャットを習得する方法をご紹介します。

私はジャズギタリストなので歌は歌いませんが、ジャズにおけるアドリブの研究を現在でも続けています。

私は「ジャズが弾けるようになりたい!」と思ってからジャズらしい演奏ができるようになるまで15年程も掛かってしまいました。
ジャズがなかなか弾けなかった大きな理由は、『ジャズをきちんと理解していなかった』という点が非常に大きいです。
ジャズを理解していない=アドリブが弾けない(もちろんアドリブ以外も)、です。

現在ではさまざまなジャズ演奏活動などを行っていますが、アドリブソロを弾くためには『頭の中で歌うことが重要』だと考えています。
頭の中で歌っていない演奏は無機質で機械的になってしまい、魅力に乏しいからです。

そんなわけで、アドリブスキャットについて楽器でのアドリブに負けないくらい研究してきました。
これまで得た知識や経験を踏まえて、アドリブスキャットの習得について詳しく解説していきます。




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はじめに


ジャズの習得=外国語の習得・ジャズのアドリブスキャットはかなり難しい

まずはじめに。
ジャズでのアドリブスキャットはめちゃくちゃ難しいです。

楽器を演奏する人でもジャズのアドリブを習得するのにめちゃくちゃ苦労します。
ましてや、楽器という『音を鳴らし、音程を示し、音楽理論の理解を助けるツール』がないボーカルでジャズ形式のアドリブをするのは至難の技です。

自由自在にジャズのアドリブスキャットをするのは、かなり、めちゃくちゃハードルが高いと思って過言ではありません。
そして、アドリブスキャットを習得してライブなどである程度カタチになったパフォーマンスができるようになるには非常に時間も労力も掛かることだと認識するところからがスタートです。


ジャズの習得は外国語の習得と同じだとよく言われます。
外国語をマスターするくらいの難易度と労力だと言うことでもあります。

そして、ジャズを演奏するミュージシャンなら誰しもが痛感していることだと思いますが、ジャズのアドリブはなんとなくできるものではありません。

なので、なんとなくいろんなCDを聴いたり歌ったりの『なんとなく』ではなく、体系的に根気強く取り組む必要があります。

ふつうのアドリブとジャズのアドリブはまったくの別物

いわゆるポップスやロックなどの『ふつうのアドリブ』と『ジャズのアドリブ』はまったくの別物です。

楽器演奏者でもジャズを弾くのが難しい理由がここにあります。

ジャズはジャズの方法論に則(のっと)っていないとジャズになりません。

ジャズの曲自体は楽曲を覚えて練習すれば歌えますが、アドリブスキャットとなるとなかなかできない、つまり「やってみるけどなんか違う」のもこれが理由です。


ジャズの方法論に則っていないとジャズにならないので、

「ランランラン〜♩ ランランラン〜♩ 」

みたいな、謎のハミングになりがちです。
(それっぽく歌ってもすぐにバレる)

周囲は熱くて渋いビバップを演奏しているのに『謎のルンルン調のハミング』は調和しません。

きちんとジャズについて理解していないと、ルンルン調のハミングを脱却できないのです。



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ジャズの歴史理解は重要


ジャズは非常に歴史が重要な音楽です。

いま現在アメリカの超一流のジャズミュージシャンでもチャーリー・パーカーの曲を演奏します。
アレンジをする場合もあるし、オーソドックスなコンボスタイルでも、です。
ロックやポップスの場合、チャック・ベリーやエルビス・プレスリーの曲をほぼ同じようなスタイルで演奏することはまずありえません。

そして、プロ・アマ問わず演奏される『ジャズスタンダード』と呼ばれるさまざまな曲自体も、ほとんどが古い曲ばかりです。

ジャズはその歴史と無関係には成立しない音楽になっているのです。


なので、まずはジャズの歴史について少しずつでも理解を進めることをオススメします。


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現在の一般的なスタイルのジャズ(いわゆるモダンジャズ)はだいたい1940年ごろにアメリカで生まれました。

ジャズは、当時のおもに黒人ミュージシャンたちによって生み出された大発明です(私はジャズという発明があまりにも凄すぎて、何百年先もこのスタイルは廃れずに続いていくと思っています)。

1940年以前からジャズはありましたが、当時のチャーリー・パーカーを筆頭とした天才ミュージシャンたちがジャズを大きく変えました。
簡単に言うと、チャーリー・パーカーが当時のジャズに大革命を起こし、現在のジャズを作ったのです。
※正確に分析するとチャーリー・パーカーたち複数のミュージシャンの間でジャズが形成された、という論もあります。

それまで(1940年以前)音楽的にはまだまだ稚拙で、大衆が踊って楽しむ『ダンスミュージック』だったジャズ。
それが、チャーリー・パーカーらによって飛躍的に音楽性が発展し、鑑賞の対象となる音楽になりました。

音楽性が発展したことがジャズの楽しさと難しさに繋がっています。

聴く人の視点からは『楽しい』『美しい』といった鑑賞的要素が強く、プレーヤー(ミュージシャン)の視点からは『難しい』『楽しい』『興奮する』といったある種のフィジカルで競技的要素があります。
現在のジャズが生まれた背景には、演奏者のスキル・腕を競い合うという要素もあるので、難しいのは当然とも言えます。


上手い人ほどジャズについて詳しい

ジャズの面白いところは、プロのミュージシャンなど、素晴らしいプレーヤーほどジャズの歴史や過去のミュージシャン、演奏される曲について深く理解しているところです。

ジャズでプロのミュージシャンとして第一線で活躍しているのに、ジャズの歴史などについてあまり知らない、という人はおそらく皆無です。
プロのミュージシャンにレッスンを受けると、おそらくだいたいの場合、自分の知識の無さに気付かされると思います。
曲を知らなかったり、ミュージシャンを知らなかったり、逸話やエピソードを知らなかったり。
単に演奏スキルだけではなく、知識とその理解も重要なのです。


というわけで、演奏スキル(歌うこと)だけに集中せず、
・本屋さんなどでジャズの本を買ってみる
・聴かず嫌いせずに、いろんな音源を聴いてみる

という点も同時に大事にすると良いと思います。

ジャズについて多方面で詳しくなると同時に、アドリブのスキルも上がっていくはずです。

【参考】パーカー以前の古いジャズ

1939年10月6日に行われたカーネギーでの演奏。下の方で紹介しているチャーリー・パーカーの演奏と聴きくらべてみてください。
ノリがだいぶ違うのがわかると思います。

Benny Goodman and His Orchestra
Benny Goodman (clarinet)
Jimmy Maxwell, Ziggy Elman, Johnny Martel (trumpet)
Red Ballard, Vernon Brown, Ted Versely (trombone)
Toots Mondello, Buff Estes (alto sax)
Bub Bassey, Jerry Jerome (tenor sax)
Fletcher Henderson (piano)
Arnold Covey (guitar)
Art Bernstein (bass)
Lionel Hampton (drums)
10/06/1939




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オススメの練習方法

アドリブスキャットを習得するためにオススメの練習方法は以下のとおりです。

  1. アドリブを口ずさめるまで曲の暗記
  2. 音楽理論の学習
  3. ビバップのリズムを掴む
  4. 音程をつかむ(コードトーンとテンション)
  5. テーマのフェイク
  6. ひたすら2-5-1
  7. 2-5-1からコーラス全体への展開
  8. アドリブを分類して引き出しを増やす
  9. 道具を使った練習

それぞれの方法について、詳しく解説していきます。



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1. アドリブを口ずさめるまで曲の暗記

とにかく聴きまくってジャズのノリを叩き込む

現在のジャズはチャーリー・パーカーが生み出した(ただし正確にはいろんな説あり)。

というわけで、まずはとにかくチャーリー・パーカーに触れるのが肝心です。


古い(音楽的にまだ稚拙な)ジャズが現在の(高度な)ジャズに変革を遂げたのは、以下の二つの点にポイントがあります。
リズム
ハーモニー(和声)


古いジャズから、リズムとハーモニーついての大きな発展があり、モダンジャズ(=ビバップ)になった。
ということです。


これを演奏する視点で言い換えれば、(現在の)ジャズにはリズムとハーモニーについての独自性があり、それらを理解・習得しないと古いジャズや他のジャンルの音楽と差別化できないということです。
なんとなくアドリブをするとジャズにならないのは、この『ジャズ独特のリズムとハーモニーが体得できていない(=差別化できていない)』ためです。

ちなみに、モダンジャズでのアドリブスタイルを『ビバップ』と呼びます。


ジャズの原点はチャーリー・パーカーにあり。


まずはとにかくチャーリー・パーカーの曲を聴くところから始めましょう。

以下に課題曲を挙げます。

【課題曲1】Charlie Parker / Cherokee


ジャズスタンダード曲『Cherokee』です。

名演と呼ばれる有名な初期(1942年)のパーカーの演奏ですが、これを空(そら)で歌えるまでとにかく聴きまくってください。
めざせ1000回!!

この演奏にはジャズのアドリブの重要なエッセンスがめちゃくちゃ詰まっています。
何度も繰り返し聴いているうちに口で歌えるようになり、なんとなくクセのようなものがわかってくるはずです。

困ったらパーカー

英語の学習をしてもすぐには話せないのと一緒で、アドリブの練習をしてもなかなかスラスラとフレーズがでてこないと思います。

「どうすればいいんだろう?」
と困ったらチャーリー・パーカーに戻るのがオススメです。
チャーリー・パーカーのいろんな音源を聴いてみてください。

【課題曲2】Hank Mobley / Remember


課題曲2はHank Mobley(ハンク・モブレー)の『Remember』です。

これも超・超・超有名な曲です。

ハンク・モブレーやジョン・コルトレーンなどなど、チャーリー・パーカーにつづくジャズミュージシャンたちは、パーカーら初期ジャズミュージシャンの演奏を聴きまくって体得していきました。

この曲のサックスソロを何度も繰り返し聴いて、ソロを覚えてください。
演奏に合わせてほぼ同じように口ずさめるようにするのが目標です。


パーカーとまったく同じような演奏ではありませんが、ビバップに共通するノリがわかってきたら成功だと思います。


↓YouTubeを探したらハンク・モブレーのソロをコピーした方がいました。
こんなふうにできたら完璧です?。



A Studio Chronicle チャーリー・パーカー

バードの絶頂期の録音をレーベルを超えて網羅したボックスセット。
チャーリー・パーカーの必聴5枚組CD。



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2. 音楽理論の学習

ジャズは
・フィジカルなトレーニング(演奏のスキルなど、アウトプットのトレーニング)
・知識の学習(音楽理論や楽曲の解釈など)
の両方が必須です。

ただただ歌ったり、楽器の練習だけをしていてもジャズ演奏は上手くならないですし、逆に音楽理論の学習だけしていても上手くなれません。

実際の演奏のトレーニングもしながら、音楽理論の勉強も必須です。
ジャズは音楽理論の塊(かたまり)なのです。

『ツーファイブってよく聴くけどよくわからない』とか『ドミナントって何?』という状態ではどうやってもジャズのアドリブは不可能なので、音楽理論も学習しましょう。


音楽理論の学習は
・本を買って読む
・誰かに習う
・YouTubeなどで観る

といった方法があります。

個人によってレベルが違うので、誰かに習うのが手っ取り早いと思います。
単に歌うのではなく『スキャット』をするための学習という面では、楽器を演奏するミューシャンに習った方が良いと思います。
具体的な理論の解釈やコード進行に合わせたフレージングについて教えてもらえるはずです。

併せて音楽理論の本を読んだり、YouTubeの動画を見ると良いと思います。



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3. ビバップのリズムを掴む

『ジャズはリズムが命』と言っていいくらい重要です。

上で、現在のジャズはリズムとハーモニーの革命によって生まれた、というような記述をしましたが、ハーモニーについては音楽理論の学習で体得できますが、リズムについても理解と体得が必須です。

ある程度ジャズは理解しているのに、アドリブスキャットを試しにやってみて
「ランランラン〜♩ ランランラン〜♩ 」
みたいな『謎のルンルン調のハミング』になってしまう場合は、おそらくリズムが身についていないと思われます。

リズムの練習方法

以下の動画が非常にわかりやすいので目を通してみてください。


オススメなのは上の動画にあるような感じで、メトロノームに合わせて『ドゥバドゥバッバ♩ドゥバドゥバ♩』と口ずさむ方法です。

いろんなテンポで10分くらい(※)ひたすら『ドゥバドゥバ♩』を歌います。
※時間があればもっとやっても良いです
この際、音程は必要ありません。

Drumgenius』というジャズドラムをループ再生できるアプリがあります。
メトロノーム以外に、このアプリを使うのもオススメです。
メトロノームだとリズムが完全にフラットですが、『Drumgenius』だとスイングしているリズムなので、併用すると良いでしょう。


はじめはメトロノームだとノリが掴みづらいかもしれないので、チャーリー・パーカーの曲など何かジャズの曲を掛けながら、それに合わせて『ドゥバドゥバ♩』も良いと思います。
パーカーのアドリブに合わせて、(音程は無視して)パーカーのフレーズを『ドゥバドゥバ♩』やるのはかなり良い方法です。

楽器演奏者でもジャズのリズムをつかむにはかなり時間が掛かります。
まさに外国語学習です。

できれば毎日のようにリズムトレーニングをやると良いと思います。


ある程度ジャズを理解してくると音程(ハーモニー)に目が行きがちですが、リズムも重要だと常に意識しておく必要があります。

【余談(だけど重要)】発音について

アドリブスキャットの発音(歌詞)は「ララララ〜」ではなく『ドゥバドゥバ〜♪』などの濁音系です(おもにダ行を中心に使用)。
この発音はジャズのリズムを出すためにとても重要です。

詳しい解説は以下の動画をぜひご覧ください。




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4. 音程をつかむ(コードトーンとテンション)

ジャズのアドリブはコード進行に沿って、その流れに乗るようにフレージングしていきます。

音程をきちんと把握していないとコード進行に乗れなかったり、音を外してしまいます。
意識的に音を外せば、いわゆる『アウトする』という方法ですが、意図せずに外すとただのミストーンになります。

まずはコードトーン

ピアノなどを使いながら、まずはコードトーンを把握しましょう。

・メジャーセブンス(C△7など):1、3、5、メジャー7
・マイナーセブンス(C-7など):1、♭3、5、♭7
・セブンス(C7など):1、3、5、♭7
・マイナーセブンスフラット5:1、♭3、♭5、♭7


3和音は1度、3度、5度の3つの音から構成される和音。
4和音は1度、3度、5度、7度の4つの音から構成される和音。

まずは、楽譜を見て、出てきたコードについてコードトーンが何かを頭の中で理解していること。

【例】
C△7がでてきたら1、メジャー3rd、5、メジャー7thだとすぐにわかる。

メジャー3度が『ミ』だとか実際の音名までは出なくても良いと思いますが(大変すぎるので)、
『メジャーコードなので3度はマイナー3rdではなく、メジャー3rdだ』
といった基本的な認識は反射的にできるのが理想です。


ボーカルは楽器演奏者とは違って細かい音程の認識は難しいと思うので(例えば『G♭7』の『♭7』の音をすぐに歌う、とかは厳しいと思います)、最低でもコードに対する3和音(1度、3度、5度)くらいはイメージできれば良いでしょう。

まずは特定のコードに対して、どんなコードトーンかイメージできるようにしましょう。

・メジャーコード、例えば『C△7』をピアノで鳴らして『ドミソー』と歌う
・マイナーコード、例えば『C-7』をピアノで鳴らして『ドミソー』と歌う(ミの音程は『ミ♭』)

(音程だけ正確に歌って「ラララー」でも良いです)
というふうに3和音から体に染み込ませて、音程感をつける、音程をつかむと良いと思います。

テンション

テンションとはコードトーン以外の音です。
つまり1、3、5、7度以外の音。
C△7ならレ(9th)、ファ(11th)、ラ(13th)といった音です。

テンションサウンドをすべて列挙すると以下とおりです。
♭9、9、#9、11、#11、♭13、13


ジャズのアドリブでテンションは必須。
楽器演奏者がアドリブをすると、フレーズの中にテンションがたくさん入ってきます。
が、ボーカルの方にとってテンションはかなり難しい(=音程がとりづらい)です。
コードトーン以外の音なので、微妙で、感覚的に把握しづらい音なのです。

明確に意識しないと聞き取りづらい、と言ってもいいでしょう。


ジャズのアドリブには必須で、フレージングの中にテンションが入るとジャズらしくなるのですが、『曲の流れのなかでうまく使わないと機能しない(よくわからない)』のもテンションの難しいところです。
つまり、練習でピアノなどを使って「ジャーン」とコードを鳴らして、テンションの音を歌ったりしてもよくわかりません。
おそらく「で、なんなの?」となるはずです。

歌いまわしのフレーズとしてテンションというコードトーン以外の音を多用する、と考えれば良いでしょう。


『フレージングの中に自然と取り入れられたら成功』というのが最終目標として、
1)まずはテンションとはどんなサウンドなのか把握しておくこと
2)慣れたら実際に『狙って』音を出せること

という流れで習得できれば良いと思います。

マイナーコードでの13thの音や、セブンスコード(II7th)での#11の音が出せたらジャズらしくなって非常にかっこいいので、徐々に取り入れられるようにしましょう。



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5. テーマのフェイク


自由自在なアドリブスキャットは高難度の至難の技です。

まずはテーマのフェイクができるようにしましょう。
テーマをちょっと変えて、アレンジして歌うことです。
これはジャズに限らず、よく使われる手法ですね。

テーマをちょっとアレンジ、と言っても実際にやってみるとけっこう難しいので、CDなどいろんなミュージシャンの演奏を聴いて、テーマ部分をコピーすると良いです。

「あっ、このフェイクかっこいい!」と思ったらコピー。
また「このフェイクかっこいい!」と思ったらコピー。
これを繰り返すしかないと思います。

やはりオススメはチャーリー・パーカーですが、サックスの歌いまわし(フェイク)は難しいので他の楽器、ボーカルものでも良いでしょう。

アドリブに目が行きがちですが、テーマのフェイクも重要です。
そのままアドリブに繋がるから、言い方を変えれば『テーマのフェイクの延長線上にアドリブがある』からです。

テーマをフェイクできるだけでだいぶ歌の印象は変わります。

少しずつテーマをフェイクできるようになったら、フェイク要素を増やしていき、スキャットにつなげていくと良いと思います。



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6. ひたすら2-5-1

2-5-1(通称:ツーファイブ)はコード進行の重要なポイントです。
【例】
D-7 - G7 - C△7など。

ツーファイブはどんな曲にも入っていて、コード進行の軸になるポイントなので重要な進行となります。
特に5(ファイブ:5度)から1度への進行は大きな流れが感じられるポイントでもあります。

コード進行での役割は徐々に把握するとして、まずはツーファイブでの歌い慣らしがオススメです。
曲全体、コーラスすべてをいきなりアドリブするのはキツいので、ツーファイブに絞ってとことん練習します。

ちなみに歌詞は『ドゥバドゥバ♪』『ドゥダディダ♪』などです。
これは歌物のCDを参考にすると良いと思います。
※くわしくは上の方に挙げた余談(発音について)を参照してください
「ララララ」とかではジャズのノリが出ないので、『ドゥバドゥバ』系をオススメします(濁点が大事です)。


【練習方法】
1)iReal Proなどで2-5-1進行のループを用意(D-7 - G7 - C△7など)
2)ひたすらそれに合わせて自由にアドリブする
3)慣れてきたらメジャーツーファイブ(D-7 - G7 - C△7など)とマイナーツーファイブ(D-7♭5 - G7 - C-7など)で繰り返し練習



ツーファイブだけに絞るのは、コード進行が単調なのでいろんなフレージングをしないといけない、という理由もあります。
つまり、いきなりコーラスすべてをスキャットしてもアドリブフレーズの引き出しがないのですぐに『ネタ切れ』になってしまうのです。

ツーファイブのループで
・リズムを変える
・短いモチーフフレーズを繰り返して発展させる

といったさまざまな方法を試してみて、いろんな歌いまわしができるようにしましょう。



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7. 2-5-1からコーラス全体への展開

ツーファイブでいろんな歌いまわしができるようになったらコーラス全体、つまり曲に合わせてアドリブで歌ってみましょう。

うまくできなかったり、ネタ切れになるようなら
・コピー
・ツーファイブでのひたすら練習

に戻ってみてください。

ジャズのフレージングは自分で生成するより、結局のところはコピーするしかありません。
コピーをしまくった先に自分のアレンジが生きてくる、という流れです。



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8. アドリブを分類して引き出しを増やす

アドリブはフレーズのストックとの戦いでもあります。

上手になればスラスラとフレーズが出てきてネタ切れになることはありませんが、そうとうな修練を積まないと難しいです。

フレーズのストック(ネタ)を増やすために効果的なのは、歌いまわしを分類したトレーニングです。
これはボーカルに限らず楽器でも一緒です。

分類トレーニング


  • 低い音域、中くらいの音域、高い音域に分類
  • ロングトーン主体、8分音符主体、短い音符主体、リズム主体、モチーフ主体
・ロングトーン主体は長い音符を主体にしたもの
・8分音符主体はその名の通り8分音符をメインにしたもの
・短い音符主体は16部音符など短い音符を主体にした(速い)フレージングをメインにしたもの
・リズム主体はリズム要素を多く取り入れたフレージング(「タッタッタ」「タッタラ」「ッタッタ」など)
・モチーフ主体はモチーフのフレーズを決めて、それをひたすら繰り返して発展させる歌いまわし

まずは自分が出せる音域を3つくらいに分けます。
例えばギターなら、0フレット〜6フレットくらいまで、6フレットから12フレットくらいまで、10フレットからそれ以上、といった感じです(音域をキッチリ3分割ではなく、被る箇所があっても大丈夫です)。


次に、音域を決めた上で、どんなフレージングを主体に練習するかを決めます。
例えば、『低い音域』+『ロングトーン主体』などです。

オケは iReal Pro などを用いたツーファイブのループでもいいですし、曲全体のカラオケでもかまいません。
『低い音域』+『ロングトーン主体』
と決めたら、低い音域をメインにロングトーン主体のフレージングでアドリブ練習をします。

すぐに止めると意味がないので、少なくとも5分くらいは継続してみます。
※長い時間を継続することでいろんなフレージングを引き出すことができ、身体で覚えることができます。

次に『中くらいの音域』+『リズム主体』などと決めて、また少なくとも5分くらいは継続してアドリブ練習をします。



これを繰り返すと、フレーズに自然と分類ができてきます(つまりネタが増える)
アドリブをする際に、歌いまわしに困ったら『ロングトーン主体』とか『リズム主体』といったイメージをすることで、いろんなフレーズを引き出せるようになるわけです。

CDなどでいろんなアドリブを聴いてみて、「これは短いフレーズをつなげているな」とか「モチーフを展開させているな」など、アドリブを分類して分析してみるのもオススメです。

分類トレーニング → 自分で歌うフレーズの理解

分類トレーニングの目的には『ネタを増やす』以外に『自分で歌うフレーズの理解』という大切な要素もあります。

フレーズを分類してトレーニングすることで、客観的にフレーズを理解できるようになります

プロの演奏を聴いてみるとアドリブに緩急があったり、展開があったりします。
単調ではありません。
ひとつのアドリブの中にいろんな要素が含まれています。


アドリブがあまり上手ではない(スキルが未熟な)状態での演奏は
・同じようなノリがずっとつづく
・展開がない

などの単調なものになりがちです。
ただただ緩急をつければ良いというわけではなく、問題はこれを意識できていない点にあります。


フレーズを分類してトレーニングすると、自分がいま演奏している(歌っている)ものが把握できるようになるので、意図的に演奏内容を変えられるようになります。

「あ、8分音符が多いな」とか「歌いやすい『中くらいの音域』が続いているな」など、演奏中に自分のアドリブの内容を意識できるので「リズミックにしていこう」「ちょっとロングトーンを多めにして、その後速いフレーズを入れよう」といった変化をつけられるようになるわけです。


分類することで自分の得意な(あるいは苦手な)歌い方が発見できる可能性もあります。
「リズミカルなフレーズが得意だな」とか「低い音域が苦手だな」など。

苦手を克服したり、自分の武器になるフレージングを見つけたり、分類トレーニングにはいろんなメリットがあります。
ぜひ取り組んでみてください。



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8. 道具を使った練習


1. カズー

道具を使った練習もオススメです。

オススメなのはカズーです。
これは歌を楽器のようにならす道具(笛のような楽器)で、金額も安く200円程度、高くても2,000円くらいで買えます。
※練習にはちょっと高めのものの方が音が出やすくてオススメです(消耗パーツが交換できたりもする)

カズーには音程を変える箇所がありません。
人間の声をラッパのようにして鳴らすだけなので、歌うように鳴らさないといけないのです。

ちょっとウルサイかもしれないので、練習環境は考慮しながらお試しください。


カズーを使うと楽器奏者になった気分で歌えるので、気分を変えたり、サックスなどの楽器をイメージできる練習用途に最適です。

2. レコーダー

レコーダーもオススメです。
オススメと言うより『必須』と言っても良いです。

iPhoneなどのスマホでも良いですが、できればPCMレコーダー(ICレコーダー)などの良いレコーダーがあればベターです。
※声に特化したボイスレコーダー系より音楽用がオススメです

スマホだとマイクの性能に限界があるので(モノラルだし)、できるだけきちんと全体の音を拾って、かつ良い音で聴けた方が判断しやすいと思います。

用途は、自分の演奏を聴いて客観的に判断するため。

自分の演奏を聴くのはかなりキツいですが、弱点をなくして早く成長するためには必要です。
ぜひお試しください。


クラーク カズー ゴールド CLARKE Standard Gold Kazoo Tubed Display MKGD

イギリス製で職人の丹精込めた仕上がりのメタルカズー


タスカム リニアPCMレコーダーTASCAM DR-05-VER3

かんたん操作でプロの音質。24bit/96kHz対応 無指向性ステレオマイク搭載 リニアPCMレコーダー。

音楽練習、コンサートに加え野鳥や電車の走行音、更に近年では動画用の音声など、高音質ステレオ録音を必要とするシチュエーションが多く存在します。

優れた応答力をもつマイクユニットをコンパクトなボディに収めたTASCAMリニアPCMレコーダーシリーズは、これらのシチュエーションで求められる高音質録音に応えます。



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まとめ

ジャズのアドリブスキャットを習得する方法について解説しました。

習得して自由自在にアドリブスキャットができるようになるには時間も労力も必要ですが、根気強く続けることが重要です。
できることを少しづつ積み重ねることで、できるようになっていくと思います。

なんとなく歌の練習をしたりセッションなどで歌っていてできるようにはならないので、正しく取り組んで身につけてください。

当記事が参考になれば幸いです。


当サイトでもオンラインなどのレッスンをやっているので、もし興味がある方、本気で取り組んでみたい方はお問い合わせください。


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