インタビュー - ジャズマンに訊く

佐津間純さんインタビューの後編です。

前半はこちら





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上達のコツ

演奏が上達するためのコツなどはありますか?

まずはいろいろなものを聴いて、できれば自分のアイドル(好きな演奏家)を見つけること。

そしてその憧れの人の演奏を注意深く聴くことではないでしょうか。

意外と注意深く聴いているようで聴いていなかったりするんですよね。
まぁ自分もそうなんですけど。

名盤とか好きなアルバムって何度も聴くじゃないですか。
すると、例えば、5年前に聴いた時には聴こえてこなかった音が聴こえてきたりすることがあったりしますよね。
以前には気付かなかったことだったり。

そんな感じで、常に注意深く聴いていると新しいアイデアだったり、聴こえなかったことが聴こえてきて「あぁなるほどね!」みたいな。

そういう発見を楽しみながらやっていくのがいいんじゃないですかね。
それが上達のためのコツじゃないでしょうか。

さきほど(インタビュー前編で)、高校生の時にセーハコードが出てくる曲しか演奏しないと決めて苦手を克服したという話がありましたが、そういった何かオススメの練習方法やトレーニング方法があれば教えて下さい。

普段自分がやっているのは、とにかく耳を使ってレジェンドプレイヤーのコピーをするということです。

で、コピーの題材となる曲を一気に全部コピーしなくても良くて。

例えば All the Things You Are を演奏したいと思ったとして、All the Things You Areを演奏しているレジェンドの演奏をそのままコピーしてもいいし、全然違う曲からコピーしてそれをAll the Things You Areに持ってくるとか。

例えば、E♭7のドミナントフレーズをどこか別の曲からコピーしてきて、それを All the Things You Are に落とし込むとか。
もうそれだけでもいいんじゃないかと思うんですよね。

とにかくもうレジェンドのコピーをして自分の演奏に馴染ませるというか。
レジェンドの演奏を吸収するためにいろいろ試行錯誤すると。

あとはスタンダードなナンバーにたくさんハーモニーをつけることですね。

ソロギターでテーマのメロディーだけでいいので、メロディーをハーモナイズできること。
そうするといろんなことがわかりますよね。
コードに関してもシビアになるし、いろんなボイシングを覚えることができるし。

ハーモナイズという点でいうと、初心者の時点ではあまりボイシングに詳しくなかったりハーモニーのバリエーションが少なかったりすると思いますが、どのようにすれば上達できるでしょうか?
やはりレジェンドの演奏をコピーするのがオススメですか?

コピーが良いとは思うんですが、でもいきなり全部コピーするのって難しいですよね。

僕の場合で言うと、最初はやはり岡安さんにハーモナイズに関することを習いました。

で、ある程度は知識も必要になりますよね。
例えばAll the Things You Areだったら最初にFm7の♭3rdがメロディーの音で、その場合はこうやって押さえたり、違う押さえ方でこうやって押さえたりとか。
(※コードをいろいろ押さえながら)

そういうコードの押さえ方、ボイシングのバリエーションがある程度はわかっていないと始まらないですよね。

そういう勉強も必要だと思います。

ボイシングのバリエーションを増やすのはなかなか難しいですよね。
地道にいろんなポジションを試していくしかなかったりとか。

そうですね。

あ、あとは自分で知ってることだけで良かったりしますね。

自分で知ってる知識だけでなんとかその曲を演奏する。
例えばすごく簡単なもの(コード)でもいいので。

All the Things You Are だとしたら、複雑なコードを知っていればこんなふうに弾いたりいたりもできるんですけど。
(※コードを弾きながら)
でも知らないのであれば、こんなふうに自分の知っているシンプルな4和音のコードで弾いちゃったり。

そういう簡単な、自分の持っている知識を工夫する、工夫できることが大事ということですかね。
工夫してハーモナイズをし続けてみる、と。

その上で、例えばいろんな人に習ったりとか、教えてもらったりとか。
あとは、いろんなレジェンドのビデオとか観たりしながら、「あぁ、なんかいつも自分が押さえているコードとは違うところを押さえているけどちゃんとサウンドをしている。これはどういう押さえ方をしているんだろうか?」とか、「あぁこういう押さえ方があるんだな」ということを発見していくっていうことですね。

でもやっぱり、いきなりレジェンドのボイシングを聴きとるのってすごく難しいですよね…。

ビギナーの場合だとほとんど不可能に近いかもしれないです。

コードに関する知識、例えばドロップ2とかドロップ3とか、そういう理論的な話もある程度は知っているということも重要ですね。

ただただ本で見たり、突然に曲をコピーして「あぁこんなコードの押さえ方があるのか」ってやっていくより、ドロップ2とかの仕組みを知っていたりすると理解も早まるし応用もできる。
「こういう展開型を弾けば良い」とか、本などからの知識が助けになったり、知識があることでコードを聞き分けられるようになったり。

ハーモニーをコピーをするにしても知識があればそれが大きな助けになるので、そういう意味でも誰かに習って教えてもらうことも大事ですね。

複雑なハーモニーをコピーするとして、よっぽど情熱と気合いがあれば可能かもしれませんが、一つずつCDを止めて「これを弾いているな」とかやっていると、途方もない時間が掛かってしまいますよね。

単音のフレーズに比べると、やはりコードソロだったり和音のバッキングは聴き取りづらくて大変なので、個人的には上達の別れ道のひとつではないかと感じています。

うーん、なかなか上手く言えないところで非常に申し訳ないんですけど……。

あ!

なので、なぜ僕が YouTube でソロギターを弾いてアップしているかというと、そういう面で参考になればという理由でもあるんですよ。
もし自分がジャズギターをはじめたばかりの人だったら参考になるんじゃないかと。

例えば、最初から突然に「Joe PassがStella By Starlightをやってるからそれをコピーすればいいじゃん」って言われたって無理じゃないですか。

演奏の参考にするには、シンプルにスイングしてスタンダードをふつうに演奏しているものがいいと思うんですが、そんなにないんじゃないかなと思って自分ではじめました。
そういうことから、できるだけシンプルに演奏していて。
自分がシンプルにしか弾けないっていうのもあるんですけど。

これはこういう形で、このコードはこんなふうに押さえればいいんだ、みたいな発見をしてもらえたら。
わりとレジェンド達はこねくり回してたりするじゃないですか。
だからそういうのじゃなくて、できるだけオーソドックスなボイシングで弾けるということで、そういう参考になればと思っています。

ハーモニーを一言でこうやればいい、こんなふうにやればいいですよ、っていうのってなかなか難しいですよね。

だから……

難しいということです!


すごく情熱が必要なことですね。

難しくて情熱が必要だけど、いまはYouTube とかがあって耳コピだけじゃなくて目コピという作戦もあるので。
ぜひみなさん、耳と目を使って取り組んでいただけたらなと。

たしかに以前と比べたら今は上達するための手段がいろいろありますよね。
手段が少ないことで鍛えられることもあるとは思うのですが。レジェンドミュージシャン達はとにかく耳が良かったという話もありますし。

使える手段はどんどん使っていたらいいと思います。
好きなサウンドとか、いいなと思うサウンドを大事にしながらですね。

もし僕の動画も参考になるところがあればぜひ参考にしていただけたら。

自分の動画で言うと、たまに変なコードを押さえたりもしてるんですけど、でも基本的にはシンプルに演奏しているので。

「いきなりJoe Passは無理!」っていう人でも、たぶん「佐津間純なら弾けそうな気がする」みたいな感じになると思うんですよね(笑)。

佐津間さんのYouTube動画より

※他にも多数アップされていますので、佐津間さんのチャンネルをぜひチェックしてみてください。





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音の長さを知ることで表現の幅を広げる ─ 効果的なトレーニング方法

普段、日常でどんな演奏、あるいは練習をしていますか?
佐津間さんやその他のプロの方が日々どんなことをしているかというのは興味があります。

基本的にはさっき言ったようなことをやってるんですよ。

音楽を聴きながら、好きな CD とかレコードとか流しながらギターを持って、いいなと思ったらちょっと止めて「いまのフレーズはどうやってるのかな」とか考えて弾いてみたり、「いまのボイシングはどうやってるのかな」とか聞いてみたりというようなことをやってます
ね。

僕の場合はですけど、何というか、ルーティンの練習ってないんですよ。
僕はそういう練習はしていなくて。

しいて言うなら、毎日はやってないですけど、こんな練習があります。

ウォーミングアップとしてもやるんですが、(key = C の)メジャースケールをこのポジション(1フレット〜5フレットの間)とこのポジション(7〜10フレットの間)の2ポジションだけで、上昇と下降を繰り返すというものです。

メトロノームを鳴らして、例えばテンポBPM100ぐらいでやるんですけど。
これはレッスンの生徒さんにも全員にオススメしている方法なんですけど…。

(※管理人注:下の方で実際の佐津間さんの解説を動画でまとめています。参考にそちらも併せてご覧下さい。)

まずテンポをBPM100でやってみて、もし間に合わなければもっと遅くからスタートしてやってもいいんですけど、(テンポに合わせて)足踏みしながら、全音符から弾くんですよ。

で、こうやって全音符で上がっていって下がっていってってやるんです。
しかも、この1フレットから5フレットの間だけで。
こういう感じ。
(※メトロノームに合わせて全音符でドレミファソラシド〜と上がっていく)

ここまで(1弦5フレット)で、ここまで来たら同じ音から下がってくる。足踏みしながら。
(※メトロノームに合わせて全音符でラソファミレ〜と下がっていく)

で、これは全部ダウンピッキングで。

これの注意する点としては、音を出来るだけ長く。

良くないのは……
(※さきほどと同じテンポのままメトロノームに合わせて短い音符でドレミファソラシド〜と上がっていく)

これ一応弾けてますけど、音が伸びきってないんですよね。

で、できるだけ次の音との隙間が0(ゼロ)な感じで。
で極端な話、遅れちゃうんじゃないか、ぐらいな感じ。
(※メトロノームに合わせて全音符で次の音のギリギリ直前まで音を伸ばしながらドレミファソラシド〜と上がっていく)

そうするとたぶん自分が思ってるよりも音の長さってめちゃくちゃ長いんですよ。

で、これを全音符でやったら、次に二分音符でやるんですけど。
二分音符の時もまったく同じ発想で。

それ(音の長さ)に気をつけながら…。
これをダウンピッキングで、足踏みしながら。
(※メトロノームに合わせて二分音符でギリギリまで音を伸ばしながらドレミファソラシド〜と上がっていく)

これが音が短いとこんな風になります。
(※スタッカートしているような弾き方でドレミファソラシド〜と上がっていく)

下手するとこんな風に走ってきちゃう。
(※音が短く、テンポがズレる)

全然印象が違いますよね。

四分音符も。同じように演奏する。
(※メトロノームに合わせて四分音符でギリギリまで音を伸ばしながらドレミファソラシド〜と上がっていく)

でもこれも音が短いとこうなる。
(※スタッカートしているような弾き方でドレミファソラシド〜と上がっていく)

なるほど。これはすごくいい練習ですね!

超地味なんですけど、超オススメの練習です。

で、これを八分音符でもやります。
八分音符ではじめてオルタネイトピッキングでやります。

なぜこれが八分音符だけオルタネイトピッキングなのかというと、足踏みと連動していると考えるといいです。
足を踏む時〜上がる時とピッキングのダウン〜アップが連動しているという。

そんな風に考えて…
(※メトロノームに合わせて八分音符でギリギリまで音を伸ばしながらドレミファソラシド〜と上がっていく)

この時も、うしろ髪を引っぱられるような感じで。
(※ギリギリ音を伸ばして演奏)
もう遅れちゃってるぐらいの感じで。

こういう感じで弾けること。

だけどそういうところに意識がいっていないと……
(※ドレミファ〜と八分音符で弾くが、タッタッ・・とスタッカートしてるような演奏)

どこかで走ってどこかでつじつまを合わせるみたいな演奏になるんですけど。

これを気にしながら練習するのとしないのでは……例えば何かフレーズを弾いたときも。
(※音を伸ばしながら適当な2-5フレーズを弾く)

こんなふうに弾くじゃないですか。
これめちゃめちゃ長い音符に聴こえますよね。

だけどそこが意識できていないと……
(※音を伸ばさずに適当な2-5フレーズを弾く)

まぁこれは極端ですけど。

(音は合っていても)音の長さが短いために、すごく頼りないというか、心許ない演奏にになっちゃう。

(※管理人注:↓実際の佐津間さんの解説を動画でまとめています。参考にこちらも併せてご覧下さい。)

佐津間さんのおすすめトレーニング(動画版)

【※肉じゃぎ管理人注】

トレーニングの部分のみ動画にまとめました。
動画の方が伝わりやすいと思いますので、こちらも参考にご覧ください。




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このトレーニングで鍛えられるのはアーティキュレーションやリズム感なんでしょうか?

どうなんだろう、そうだと思いますね。

要は音の長さを知るというか。

で、僕は大は小を兼ねると思っていて。
(※適当なビバップフレーズを音を伸ばしたり短くしたりしながら弾く)

大は小を兼ねるから、短く弾こうと思えば弾けるし、なんていうかベターっという感じの演奏もできる。
いろんな表現ができるようになるんです。

音の意識ができていなくて、音を短くしか弾けない場合だと長く弾くこともできない。
その表現しかできないんですけど、長い音符(長く弾くこと)を知っていれば、いまのような演奏もできるし、もっとスイスイ進んでいく演奏もできるしみたいな。

つまり表現の幅が広がるのではないかな、と思っているんですよね。

なるほど。ふだん演奏していて、たしかに音の長さに対しての意識は低いかもしれないですね。

そうなんですよ。

これはけっこうオススメな練習ですね。
もうこれだけでいいくらいな。

僕自身は毎日はやらないんですけど。
なんかこう冬場とか、「手が動かないな」とか「なんか寒いな」とか思う時とかにウォーミングアップでやったりしますね。

ちなみに、この練習は別の効果もあって。

テンポがある程度まで速くなったら弾けないことってあるじゃないですか。
それが今のトレーニングをしていると、自分が思っている限界のテンポよりもちょっと速くても大丈夫になるんです。

具体的に言うとどういうことでしょうか?

音を長く伸ばすということは、次の音を弾く時のスピード感が大事になってきます。
つまり、いま弾いている音から次の音に間に合わせるためにスピードが必要になりますよね。

それによって瞬発力が鍛えられるというか。
自分が弾けるテンポのマックスが上がるんじゃないかなと思っています。

自分もめちゃめちゃ速いテンポの曲は弾けないんですが、この練習をするとやっぱりリズムが太く、というか安定するので。
ある程度速くてもわりと指がついて行くと言うか。
あと感覚的にテンポをだいぶゆったり感じられるので、いい練習なのではないかと思います。

トレーニングについて具体的に解説するとすれば、この練習法がめちゃくちゃオススメですね。
フィジカルな練習・トレーニングというのはこれだけでもいい気がします。

他にもエクササイズだったり世の中には難しいトレーニングがいろいろあるとは思うんですけど、僕がやるのはこういうものだけですね。

いま鳴らしていたメトロノームがちょっと気になったのですが、メトロノームも紹介していただけますか?

はい、SEIKOのメトロノーム(SQ-50V)です。

このメトロノームは音が気に入っていますね。
音質がいいんですよ。

ピッピッというデジタルっぽい音が出るメトロノームがあるじゃないですか。
あれだと耳が疲れちゃうので。

これだとコツコツしてるというか、原始的な音なので気に入っています。
いまはスマホでもメトロノームのアプリがあったりするので、それもいいかもしれませんね。



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実戦を想定して練習すること

練習ついてもうひとつ言うと、大事なのは実戦を想定することですね。

僕はいつも実戦を想定して練習しています。

ジャズギターをやろうと思った人ってけっこうアドリブの方法とかスケールとかそういうところに目が行きがちなんですけど。
でも実際の演奏で必要なことって、音楽が始まって、テーマを弾いて、アドリブを弾いて、伴奏して、またテーマを弾いて、それで終わる、ということじゃないですか。
ということは、アドリブ以外にやらないといけないことがたくさんあるんですよ。

だからイントロを弾けなければいけない、曲によっては。
あとメロディーも単音で、もしくはコードで弾ける必要があるっていう。

そこにプラスしてアドリブがあって、伴奏は伴奏でやらなければいけないし、あと最後にもテーマを弾いて。
テーマについては前半と後半のテーマがほとんど一緒だとしても、エンディングで締めなきゃいけないわけですよね。

だからフレーズだったりアドリブとかにフォーカスしがちですけど、他にやるべきことがあるので、いつもライブなどの本番を想定して練習する必要があると思います。
そして常に何が必要か考えるのがいいと思います。

アドリブだけ弾けてもダメだし。
逆に、例えばアドリブが全然弾けなくてもメロディーがすごく完璧に弾けたとしたら、それが音楽になると思いますね。
1コーラスで、それだけでも十分に「いい曲ですね」ってなる可能性もあるので。

自分がギターを弾いていて、それが音楽として良いのか悪いのか、ということを俯瞰して見るといいかなと思います。
なかなか難しいですけど。

それはどんなレベルにある人であろうが、常にそういうことを考えたほうが良いと。
自分も常に考えるようにしています。

やることが見えると言うか、やらなければいけないことが見えると言うか。

そんなふうに練習に臨むといいのではないかなと思いますね。



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「ポップでキャッチーなものが好き」 ─ ミュージシャンとして目指すところ

ミュージシャンとしてどんな音楽を目指していますか? 理想や目指す目標などがあれば教えてください。

これは簡単ですよ。
ケニーバレルや岡安さん、あとデュークエリントンなど、そういう偉大なジャズミュージシャンたちのような音楽ができる音楽家になりたいですね。

個人的に僕が思ってることなんですけど、ケニーさんとか岡安さんもそうだし、デュークエリントンもそうなんですけど、ジャズファンはもちろん彼らのことを大好きじゃないですか。
それに加えてあまりジャズを弾かないような人からしても、かっこいいなとか美しいなとか素敵だな、って思う要素が彼らにはあると思うんですよ。

なんというか、ポップな部分であったり、凄くキャッチーだったりとか、そういうことを忘れずにいるというか。

ジャズファンには「さすがですね」っていう感じで受け入れられる。
で、尚かつそうじゃない人達にも「意外とジャズギターっていいもんなんだね」っていうふうに思ってもらえるようなのが理想ですね。

ジャズって理論的な部分など難しい要素が多くて、追及するほど一般的な視点からするとマニアックな音楽になってしまうことも多いですよね。

マニアックでもいいと思うんですけど、マニアックなことが前面に出てこないというか。

マニアックなことをやっていたとしても、「何だかいいメロディーだな」とか「何だかいい音楽だね」っていうことってあるじゃないですか。そういう感じで。

どう考えたってケニーバレルだって岡安さんだって相当マニアックなことをやっていますよ、平然と。
だけどそこがあまり表に出てこない。

何気なく人々に浸透していく音楽がいいですね。

僕が初めて佐津間さんのCD(JUMP FOR JOY)を聴いた時にすごくポップで聴きやすい印象を受けたのですが、それはやはり以前からそういった考えがあったからですか?

そうですね。以前から変わっていませんね。

ポップでキャッチーなものが好きです。


2017年 金沢でのライブより



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バークリー音楽大学

「こんな練習をしておけばよかった」など今までに後悔してること(?)があれば教えてください。

後悔はないかな。
これはほとんどないですね。

あったのかもしれないけど忘れちゃったか。

ギターのこととか人生の選択とか、そういうことに関しては後悔はないですね。

しいて言えば、アメリカのバークリーに留学していた時にもっとアメリカ生活を楽しんでおけばよかったなぁ、とか思うことはありますね。
当時、部屋にこもりまくっていて日本にいる時と変わらないっていう感じだったんですよ。
だからもっと観光しておけばよかったなとか。

どこも行かなかったですからね、ほとんど。

バークリーはボストンにあるんですが、ニューヨークにはしょっちゅう行っていて、レジェンドが演奏するってなったら聴きに行ったりとかはしていたんですけど…。
ニューオリンズとかも行っておけばよかったなぁとか。

ボストンってボストンシンフォニーというクラシックのオーケストラが演奏するような立派なホールがあるんですよ。
それこそ世界的な小澤征爾さんとか、世界的な方達が指揮をしていたりとかするんですけど。

そこ(ボストンシンフォニー)からすごい近いところ、それこそ歩いて30秒ぐらいのところに住んでいたんですが、一切行かなかったんですよね。

だから今となっては行っておけばよかったなと思うし。
例えばグランドキャニオンとかナイアガラの滝とか、そういうところにも行ってないんですよ。

自由の女神は見たかな。

それは部屋にこもって課題や練習をしていたとか、そういうことですか?

そうですね、まぁ練習ですね。

バークリーにはトータルで2年間通っていましたが、とにかく周りに上手い人がいっぱいいるから、もっと練習しなければいけないのかなとか。

バークリーで特に勉強になったことは何ですか?

とにかく誰でもシステマチックに、手取り足取りから学ぼうと思えばどんな人でも理解できるようなカリキュラムになっていましたね。

音楽理論はすごく体系的に学べるし、それが自分で実際に演奏できるかどうかは置いておいて、アレンジとか作曲とか音楽の仕組みについては、さすが音楽大学といった感じで理解ができるようになっていました。

アメリカで生活したりとかアメリカで授業を受けたり、英語で話したり、いろんな国の人と会話したり、アメリカでの学生生活を経験できたのは良かったですけどね。
いろんな音楽をやっている人がいて、みんな一生懸命にやっていて、上手い人もめちゃめちゃいるな、みたいな。

バークリーには技術的に上手い人たちがたくさんいるという状況で、自分のスタンスについてはどのように考えましたか?

普通ならいろいろと影響を受けるとは思うんですけど、僕の場合はもう渡米する前から目的がはっきりしていたので、あまりブレることはなかったですね。

それぞれに特化している超人たちがいっぱいいる中で、どれもこれもできないじゃないですか。
だったらもう自分が好きなこととか自分がやりたいことを突き詰めればいいんじゃないかなっていう。

いい意味での諦めというか。

人は人、自分は自分、で。
彼らは彼らで楽しくやってるし、じゃあこっちも楽しくやらなきゃ損じゃんみたいな。

そういうスタンスになれたかな、と。
心の中からそういう風に思えたのがよかったかなと思いますね。



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しくじり先生!? 失敗談

しくじったことというか、これまでの失敗談についてお聞きしたいのですが、ライブとかで「あれは失敗した!」という経験などはありますか?

これはいっぱいあるんですけど、ありすぎて忘れたというかパッとは出ないですね。

忘れられているから、いま演奏活動が続けられているんじゃないかなっていうぐらい。
いちいち失敗を悔いて「あーー!!」ってなっていたらもう演奏してないと思いますよ。

思い出すとすれば、歌の伴奏で違うキーのイントロを出してしまったとか、そういうことはありますね。

そういう時は「すいません」って言ってやり直したり…「すいません」って言うしかないですよね。
ごまかせる場合はごまかして、で歌う人がキャッチしてくれたらそのまんま演奏したり。

よくあるのは、今でもよくあるんですけど、「よっしゃいくぜー!」って弾き始めたらアンプのスイッチが入っていなかったり。
ボリュームが上がってなかったとか、ギターやアンプにシールドが刺さってていなかったとか。
そういったことはありますね。

でもそんなことぐらいかな、覚えていることとしては。

僕が周りのギター仲間と話をしていると、演奏中に頭の中がぐちゃぐちゃになって何を弾いているのかがわからなくなったり、テーマをど忘れしたりという経験談が出るんですが、そういうことはありますか?

あー、はい。
ありますあります。

あるけど、さっきのイントロを間違えるとかスイッチが入っていなかったりっていうのも、「しまった。またやってしまった」って思うけど、思った瞬間に「もうしょうがないや」っていつも思っちゃうんですよね。良いのか悪いのか。

だからそんなに気にしないと言うか。

特にライブなんていうのはその場で何が起こるかわからないものだし、「人間だしいいかな」みたいな。
良くないかもしれないけど(笑)。
気にしないから平気な顔をしていられると言うか。

だからあまりそんな卑屈にならないことがポイントですよね。
「まぁそういうこともあるよ」って言う。

よっぽど大きな影響があるとしたら…、例えば自分の演奏ミスでどこかの国から攻撃されたりとか、そんなことがあるなら深刻に演奏しますけどね(笑)。

失敗をしてもそんなに大したことではないと言うか、それよりも演奏を楽しむと言うか。
演奏できていることが最高って思いながらやったらいいですよね。
自分はいつもそう思っています。

感動したこと、印象深かったライブ

これまでの音楽経験のなかで感動したことや面白かったこと、衝撃だったことなどがあれば教えて下さい。

感動したことといえば、師匠の岡安さんと共演すること、共演できたことですね。

ライブとして。飛び入りではなく。
まぁ飛び入りで共演することもあって、それも楽しいんですけど。

師匠と共演したことが何度かあるんですけど、やっぱりその時は感動しますよね。

あとは音楽の仕事をしていると、それこそ学生時代に聴いていたCDだったりライブに足を運んで聴いていた人たちやベテランの方とかがたまにライブに誘ってくれたりだとか仕事に誘ってくれて。
で、一緒に共演出来ることっていうのは本当に嬉しいですね。もうウキウキで出かけていきますよね。

そういうことがやっぱり嬉しいなと思うし、あぁやっててよかったなと思うし、頑張ろうと思うし。
そんなところでしょうかね。

ちなみに、佐津間さんが敬愛されているケニーバレルにお会いしたことはありますか?

ケニーさんに会ったことはないんですよ。

会わなくてもそういう星のもとだったということで。
会ったら会ったで感激するでしょうけどね。

過去に観たライブで印象深かったものはありますか?

ニューヨークでいろいろライブを観に行ったんですが、レコードやCDで聴いていた人たちライブは感激ですよね。
だって生でそこにいるんですものね。

特に印象深かったのはジミースミス(Jimmy Smith)とか。

ジミースミスの最後のライブを観たんですよ。ニューヨークで。
たぶんもうあれが最後ぐらいのライブだったと思うんですけど。あのライブは感激しましたね。
体調が良くないようで、2〜3曲しか弾かないんですけど。

それまで、バックバンドというかジミー以外のメンバーだけで2〜3曲演奏するんですよ。
で途中からジミーが入ってきて。

で、左手ではたぶん弾いてなくて、右手だけで『バーン』って弾くんですけど。
その瞬間に、それだけでもう雰囲気がガラッと変わるんですよ。全然違うバンドになるというか。
もう “スーパーご機嫌” みたいな。

「なんじゃこりゃ!!」って思っちゃうような、そういう衝撃はありましたね。

それはニューヨークのブルーノートでしたけどね。
そんなライブが観られてラッキーだったですよね。




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オススメの音源

CDやレコードなど、オススメの音源を教えてください。

選ぶのが難しいのですが…。

“ケニーバレルの5枚”“ケニーバレルに関係のない5枚” で選びました。

ただケニーバレルの5枚は日々変わるんですよね。
なので、“2021年9月23日・今日現在の5枚”ということで。

ケニーバレルの5枚

  • Tin Tin Deo / Kenny Burrell
  • Moon & Sand / Kenny Burrell
  • Round Midnight / Kenny Burrell
  • Lotus Blossom / Kenny Burrell
  • Night Song / Kenny Burrell

それ以外の5枚

  • Soul Station / Hank Mobley
  • Roll Call / Hank Mobley
  • A Night at Birdland / Jazz Messengers
  • Ellington Indigos / Duke Ellington
  • With Strings / Charlie Parker


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Tin Tin Deo / Kenny Burrell と Moon & Sand / Kenny Burrell

このアルバムは僕にとってのケニーバレルのはじまりのアルバムなんですよ。

もう一人の師匠の道下和彦さんに「佐津間、ケニーバレルがええんやで」って言われて、2枚貸していただいたんです。
それで聴いてみて「あ、いいな」って思って。

この2枚がカップリングされているアルバムが、『Stolen Moment』という名前で出ていて。
それ(カップリング盤)で持っているので、いまだに僕はオリジナルのアルバムをそれぞれで持っていないんですよね。
『Stolen Moment』はよく聴いたアルバムです。
もちろん、いわゆる『ケニーバレルの入り口』として有名な『Midnight Blue』はその前から知っていたんですが、このアルバムが「ケニーバレルっていいな」と本当に思いはじめたきっかけかな、っていう感じです。


Stolen Moments

2 in 1 の2枚組CD
「Tin Tin Deo」と「Moon & Sand」を収録。

Disc 1 「Tin Tin Deo」(1977)
Disc 2 「Moon And Sand」(1980)



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Round Midnight / Kenny Burrell

このアルバムは、何と言ったらいいのか、『夜のミュージック』と言うか。『大人の音楽』と言うか。

とにかくかっこいいですよね、ギターがね。
で、ギターも含めて全部、アルバム全体に流れている空気が大人で、ハードボイルドで。

「自分に無い要素だな」って思いながら…。
そういう、ちょっと危険な大人のムードになりたいな、っていうアルバムです。


'Round Midnight by Kenny Burrell

ケニー・バレルが1972年にジョー・サンプルを迎えて吹き込んだブルース・フィーリング豊かな作品。「欲望という名の電車」「メイク・サムワン・ハッピー」他を収録した1972年録音盤。 (C)RS



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Lotus Blossom / Kenny Burrell

『Round Midnight』についてはアルバム全体の雰囲気でとても良いという感じなんですが、『Lotus Blossom』に関しては、これももちろんアルバム全体でいい感じなんですけどこれはケニーさんのギターがよく聴こえるアルバムです。ケニーさんのコードワークとか、ギターがたくさん聴こえると言うか。

トリオ編成での演奏が最大なんですが、ソロからデュオからトリオまでいろんな編成で演奏していますね。

で、演奏している曲も良くて。
マニアックな曲もありますけど、サテンドールとかも演っているし、There Will Never Be Another Youも演ってるし。
一般的によくセッションとかで取り上げられるような曲を演っているんですけど、やっぱりよく聴いてみると一味も二味も違うと言うか。
すごく参考にさせてもらっているというアルバムです。

どういうふうに考えてそういう王道のスタンダードを弾いてるのか参考になる良い教材ですよね。
教材としても聴けるし、その音楽としてもいいっていう。

ケニーバレルのアルバムってそういう教材としての要素とリスニングとしての要素が両立しますよね。
ちょっとマニアックな話かもしれないですね……やばいなぁ。


Lotus Blossom / Kenny Burrell

01. Satin Doll
02. Warm Valley
03. There Will Never Be Another You
04. Lotus Blossom
05. If You Could See Me Now
06. The Night Has A Thousand Eyes
07. I Don't Stand A Ghost Of A Chance
08. Minha (All Mine)
09. For Once In My Life
10. Couplet: Once Upon A Summertime/When The World Was Young
11. I'm Falling For You
12. They Can't Take That Away From Me
13. Old Folks



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Night Song / Kenny Burrell

これは最近ケニーバレルの生誕90周年の企画で再販されたんですよ。
この『Night Song』とか、他のアルバムもあるんですけど、CD として再発されたんです。
だからいま手に入りやすくなってるのでチャンスですね。

これはもともとレコードで発売していて、確か2000年代前半ごろに『初CD化』みたいな感じで紙ジャケで出たんですけど。
すぐに廃盤になっちゃって。

このアルバムに入っている「Namely you」という曲は佐津間さんも1stアルバムに収録していましたね。

そうですね。これはとても参考にしましたね。
アイディアとかテーマの弾き方とか。

このアルバムは、演奏している曲はあまりメジャーじゃないんですけど、良い曲が多いし。
『いそしぎ(The Shadow of Your Smile)』とかはわりとポピュラーだけど、でも一般的にはあまり知られていない曲が多いかもしれないです。
オーケストラとかも入っていて、そういう大きい編成の中でケニーさんのギターがフィーチャーされていて、バリバリ弾いている作品ですよね。


Night Song / Kenny Burrell

68年にヴァーヴに録音した作品。9曲中4曲はドン・セベスキー編曲指揮のオーケストラと共演。これは当時のライバル、ウエス・モンゴメリーのポップ路線を意識したもの? そのウエスに捧げた自作のブルースでは、珍しくウエス・スタイルのオクターヴ奏法を披露。
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)



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Soul Station / Hank Mobley

ハンクモブレーは大好きですね。
このアルバムを聴いてハードバップっていう音楽にハマるきっかけになったというか、ハードバップが好きになるきっかけになったアルバムなんですよ。

ケニーバレルのCDをよく聴いていて、それでケニーバレルの音源を通じていろんなミュージシャンを知って、どうやらハンクモブレーという人もいいらしいというのを知って。それで聴いてみて。

ハンクモブレーもいろんなセッションに参加していたりするじゃないですか。
それこそジャズメッセンジャーとかもいるし、とにかくハンクモブレーは大好きですね。
特に『Soul Station』は僕にとってのハードバップの入り口だったんですよ。


Soul Station / Hank Mobley

Soul Station is Hank Mobley's acknowledged masterpiece. Mobley's hot, brilliantly constructed solos have a smooth sound and an easy feel. With Miles Davis at the time, Mobley is joined by bandmates Wynton Kelly and Paul Chambers along with a magnificent Art Blakey. A true classic.



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Roll Call / Hank Mobley

これについても『Soul Station』と同じで『THE ハードバップ』っていう感じのハードバップのアルバムですね。

アルバム全体を通して曲がかっこいいです。
とにかくハードバップっていう感じで、そういう作品が好きですね。


Roll Call / Hank Mobley

During his tenure with Miles Davis, Hank Mobley made four Blue Note albums with band mates Wynton Kelly and Paul Chambers, the most celebrated being Soul Station with Art Blakey on drums.

For Roll Call, recorded nine months later, Mobley assembled the same magnificent rhythm section and added Freddie Hubbard on trumpet. The result rivals its more well known predecessor in swing, soul and incredible solos. The gospely "A Baptist Beat," heard here in two takes, has become a favorite among club DJs and acid jazz fans.



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A Night at Birdland / Jazz messengers

このアルバムはボリューム1と2に分かれてリリースされていていろんなバージョンが売られているようなんですが、僕が持っているのは『A Night At Birdland (Volume 1/Live)  / アート・ブレイキー』です。
これも『THE ハードバップ』っていう感じで、曲も良いしメンバーも良いし。

とにかくなんだかもうキャッチーですよね。メロディーとか、曲とか。一見複雑そうには聴こえるけど。

その、わりと僕にとって最初はチャーリーパーカーとかマイルスデイビスとかよりも、こういったハンクモブレーとかジャズメッセンジャーズとかの方がすごくポップに聴こえたんですよね。

堅苦しくないというか、「わーい楽しい」みたいな。

だからそういう楽しい雰囲気が好きですね。
気に入ってる曲はSplit Kickかな…。


A Night at Birdland / Jazz messengers

ハード・バップ誕生のドキュメントにして、栄光のジャズ・メッセンジャーズ結成前夜の伝説的ライヴその1。デビュー間もないクリフォード・ブラウンの超絶の快演が聴ける。冒頭のピー・ウィー・マーケットの個性的なMCも有名。(Blue Note)



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Ellington Indigos / Duke Ellington

これはですね、デュークエリントンは何を聴いてもすごく興味深いんですけど、このアルバムはすごく聴きやすいアルバムだと思います。
曲についても、わりと馴染みのあるスタンダードもけっこう演っていて。

エリントンの Mood Indigo とか Prelude to a Kiss とか、Solitude とかも演っているんですけど。
Tenderly とか All the Things You Are とか、よく知られている曲も演っていて。
枯葉(Autumn Leaves)も演っていて。枯葉は歌ものだったかな。

これはデュークエリントンのスタンダードも聴けるアルバムですね。

で、録音もすごくいいし、オススメです。


Ellington Indigos / Duke Ellington

【ダンス音楽としてのジャズを表現したエリントン異色の名盤が待望のCD化】
エリントンが'ダンス音楽としてのジャズ'を表現した異色の名盤「Ellington Indigos」(Columbia CL1085)は、1957年3月から9月、10月にかけて5回のセッションで収録されました。このCDは、オリジナル・アルバムには収録られなかった未発表曲・別バージョンを追加した初の完全版。エリントンのピアノをはじめ、ポール・ゴンザルベスのサックス、ハロルド・ショーティ・ベイカーのトランペット、歌手のオジー・ベイリーなど、メンバーの持ち味を生かしたバラードがじっくり楽しめる作品です。



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With Strings / Charlie Parker

これはもう言うことなし、という感じですね。

パーカーの音源は、ダイアルがいいとか、サボイがいいとかいろいろあって。
で、どれも良いんですけど、これは音楽としてずっと聴いていられるアルバムで誰が聴いても良いっていう音源ですよね。

チャーリーパーカーで何か一枚を選べって言われたら僕はこれかな、っていう感じですね。


With Strings / Charlie Parker

チャーリー・パーカーがストリングスをバックにスタンダードを朗々と噴き上げる美しい芸術的名盤『チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス』が本作品で初公開となった別テイクと共に聴くことのできるデラックス盤が2UHQCDで初日本盤化。バードのキャリア最大のヒット曲で自身の最高傑作の一つと考えていた録音「ジャスト・フレンズ」をはじめとするスタジオ・セッション、1950年のカーネギー・ホールでの素晴らしいライヴ・セットではジミー・マンディの新しいアレンジによる「イージー・トゥ・ラヴ」や、ジェリー・マリガンの「ロッカー」、「レペティション」の素晴らしいヴァージョンを収録。

オススメの音源はこんなところでしょうか。

なんか気の利いたコメントもなく(笑)。



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今後の目標など

今後の目標ややってみたいことなどがあれば教えてください。

やりたいことはやっぱりリーダーアルバムの制作です。
特に、あのYouTubeではさんざんやっているんですけど、ソロギターで何かアルバムを作れたらいいなと。

あとはバンドで、オススメの音源で挙げた『A night at bird land』とか『Roll Call』とか、そういうハードバップの雰囲気のムードのアルバムの中にギターが入っているってなかなかないじゃないですか。
だからああいうハードバップの雰囲気の中にギターが入った、ギターがフィーチャーされているような、そういうものが。
サックスとかトランペットもいるんだけど、ギターのアルバムというようなものを。

最初に作ったアルバム(Jump For Joy)とか、まさにそんな感じでもあるんですけど。

そういうものを作りたいなっていうのと、あとは自分のソロギターのアルバム、ソロギターだけっていうアルバムは作りがいがあるんじゃないかな、と。

やりたいこと、常々思っている目標としてはそんなところでしょうか。

結局、自分がジャズという音楽に魅了されて…。
岡安さんやケニーバレルの音楽を聴いて、「素敵な音楽だな」って思ったわけなんですけど。
そういう感じで、自分の、佐津間純のジャズギターを聴いて「ジャズギターっていいものだな、やってみようかな、弾いてみようかな」なんて思ってもらえるような演奏をすること。

もうずっとそれが目標ですね。

やりたいことと言うか。



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リリースした音源について

佐津間さんが最近リリースした音源について教えてください。

テナーサックスの後藤輝夫さんとデュオで『Glad There is You』というアルバムを出しました。

このアルバム以前に『But Beautiful』というタイトルで、2012年にウェブで配信をしたんですけど。
それが2014年にアルバムとしてリリースされたんですが、それの続編というか。

そこから後藤さんとのデュオの活動がはじまって。
そこから10年ぐらい経ってしまったんですけど、昨年、いや今年かな。今年に入ってから2枚目を作ろうということになって。

これ(Glad There is You)は曲によっては僕がギターソロを弾いていたり、後藤さんが1曲だけサックスのみの曲を弾いていたり、というアルバムになっています。

『But Beautiful』は亀吉音楽堂(※大田区鵜の木のレコーディングスタジオ)で録音したんですが、今回は後藤さんの紹介で別のところでレコーディングしました。


Glad There is You / 後藤輝夫&佐津間純

【収録曲】
1. Flamingo
2. Love Letters
3. Sunflower
4. Chelsea Bridge
5. I'm Glad There is You
6. Ligia
7. Lotus Blossom
8. Feeling of Jazz
9. Old Folks
10. Night Lights
11. Beautiful Friendship
12. Ev'ry Time We Say Goodbye




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それともうひとつありまして。

『”TOKYO GROOVIN’HIGH!”』 という日本を代表するドラマーの高橋徹さんの初のリーダー作で、8月にリリースされたものです。
僕は3曲演奏させて頂いていて。
なかなかドラマーのリーダーアルバムってないと思うんですが、まぁ僕がこう言うのもなんですけど本当に素晴らしいドラマーで。
今回参加させて頂いて光栄です。

僕の他にもそうそうたるミュージシャンがいろいろと参加して演奏しています。
面白いのが、スペシャルゲストとして笑点の三遊亭小遊三さんと春風亭昇太さんが参加してるんですよ。

もともとそのお二人が楽器をやっていて、高橋さんがサポートで毎年演奏していたらしいんですよね。
そのご縁があって彼らが1曲だけ参加してくれています。まぁ僕はそこでは一緒に演奏していないんですが。

そういうわけで、すごく楽しいアルバムになっていますので、ぜひ聴いていただきたいなと思います。
こちらもよろしくお願いします。


”TOKYO GROOVIN’HIGH!”

M1 Theme Of Tokyo Groovin' High
M2 These Are Soulful Days
M3 Limbo Jazz
M4 The Eternal Triangle
M5 The April Fools
M6 Dear Old Stockholm
M7 Don’t Take Your Love From Me
M8 Forest Flower
M9 Travelin’ Light
M10 Shuffle Boil
M11 Inception
M12 When You Grow Too Old To Dream

音源以外の、その他の音楽活動についても教えてください。

細々とではありますが、YouTube でソロギターでの演奏動画を更新しているのでチェックしていただければ嬉しいです。
参考にしていただけるようにスタンダードな曲はシンプルに演奏したりしています。

あとジャズギターのレッスンもやっていますね。

ZoomとかSkypeとか、あと最近ではSyncroomっていうソフトを使ってのオンラインレッスンも行っています。
Syncroomを使うとタイムラグがなく通信ができるので、一緒に演奏もしながらのレッスンもできます。

あとは公式のウェブサイトもありますので、ライブやその他いろいろなお知らせ、コンテンツについてはそちらもチェックをお願いします。

※下に各リンクがあります。



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さいごに(余談)

今回はいろんなお話を聞かせていただいてありがとうございます。具体的な練習方法など、いろいろと参考になりました。

ありがとうございました。

あの練習(音の長さについてのトレーニング)については、いつかYouTube用の動画でまとめようとは思っていたんですけどね。
あれは僕にとってはすごく大きな練習です。

これまでいろんな人に習ってきましたけど、言い方は違うけれども、やっぱりみんなそういうことを何気なく言うんですよね。

で、そういうフィジカルなエクササイズというか練習については、道下和彦さんが『音の長さについて』ということで、僕が紹介したような感じですごくわかりやすく教えてくれたんですけど。
岡安さんにも言われたことがあるし。

あとMark Whitfield(マーク・ホイットフィールド)にも一回だけレッスンを受けたことがあるんですけど、彼も同じようなこと言ってましたね。

全音符から練習するというのは彼のアイディアで。
音の長さとかその次の音符までの弾き方、というような部分は僕が勝手に解釈してそう思っただけなんですけど。

演奏していて音を伸ばしてる時に「いろんな音が出るだろ」って。
ただ伸ばしてるだけでもいいし、ビブラートをかけたりしてもいいし。
ビブラートのかけ方もいろいろあって、とか。

とにかく音を伸ばしている最中にもいろんな音が出るはずだから、いろんな音を探究しなさい、というか。

音を伸ばしている時にいろんな音をトライするというか、そういう話をしてもらいましたね。



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※このインタビューは2021年9月23日にZoomを使用して行われました。

【公式サイト】Jazz Guitarist "Jun Satsuma" Official Website


【YouTubeチャンネル】佐津間純 Jun Satsuma


オンラインレッスンについてのご案内。



Jump For Joy

エリントン作曲でケニー・バレルの名演でも知られるナンバーをアルバム・タイトルに冠した作品らしく、1曲目のオリジナル「マスタッシュズ・スマイル」も実にご機嫌というか、ジャズの楽しさ、50年代のハードバップ全盛期のパワーやカッコ良さが伝わって来る。
現在31歳。神奈川県鎌倉市出身。洗足学園音楽大学からバークリー音楽大学に進み、2006年にギブソンジャズギターコンテストに入賞した佐津間純。影響を受けた音楽家にケニー・バレルと岡安芳明、道下和彦を挙げているが、2曲目の「グルービン・アット・ザ・ナイト」はそのケニーに捧げた曲で、続く「マイナーズ・フィーリング」共にブルージーさ満点の自作曲は純粋にカッコイイ。期待度◎です。(TheWalker's 加瀬正之)


WEAVER OF DREAMS

正統派ジャズ・ギタリスト佐津間純と実力派女性ベーシスト若林美佐の双頭リーダー&デュオ・アルバム
オープニングから明るく軽快なサウンドに惹き込まれる。愛用のGibson Super 400と師である岡安芳明所有のK. Yairi のアコースティックギターで心地良い音色を聴かせる佐津間純。アコースティックならではの音色と男勝りの力強いビートを聴かせる若林美佐。2007年頃から東京、神奈川を中心に活動続けており、逗子で定期的に開催している「朝Jazz」でも話題の2人。若林のボーイングがフィーチャーされたS・クラーク作の「My Conception」。憧れのK・バレルに捧げた佐津間のオリジナル「The Corner」の他、若林のベースソロによるナンバーや岡安芳明作の楽曲も必聴。心温まる1枚。(The Walker’s 加瀬正之)


But Beautiful / 後藤輝夫&佐津間純

サックスプレイヤー後藤輝夫とギタリスト佐津間純のデュオによる極上のジャズ・スタンダード・アルバム
この作品はもともとハイレゾ音源としてe-onkyoより配信限定で発表された作品で、今回待望のCD化が実現。ジャズだけでなく幅広いジャンルで活躍してきたベテランサックスプレイヤー後藤輝夫と2013年12月にデビューアルバム『Jump For Joy』をリリースした注目の若手ジャズ・ギタリスト佐津間純とのこのデュオ作品は、 「第20回日本プロ音楽録音賞ベストパフォーマー賞」を受賞する等、以前から注目されていた作品。同賞受賞曲「Teach Me Tonight」を含む12曲を収録。
淡々とした演奏の中に味わいもあり、サックスの息づかいやギターのピッキングと臨場感もリアルに再現されている。(The Walker’s 加瀬正之)


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