ギター委託販売で詐欺被害に遭いそうになった話
管理人ブログ
詐欺とギター
昨年(2019年)、神戸の楽器店:『アップルギターズ(以下:林檎ギターズ)』の倒産をめぐる事件が話題になりました。
具体的にどんな事件かと言うと、『林檎ギターズがお客さんのギターを委託販売し、売却した代金を委託主に支払わずに倒産した(代金を前払いして輸入の新品を注文したが商品が届かないケースもあり)』というものです。
この事件を目にした時、非常にショックを受けました。
なぜなら、事件になる約半年前に私も林檎ギターズを訪れ、ギターの購入と委託販売を検討していたからです。
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身近に迫った詐欺の手
探していたビンテージES-175
2017年頃から、メインのフルアコ(L-5)の音に少しばかり不満があったので、別のフルアコを探していました。
探した結果、サウンドと弾きやすさ等を考慮して辿り着いたのが "ビンテージのES-175" 。
決して安いギターではないのはわかっていたので、手持ちのギターを委託販売 or 下取りに出してES-175を買おうと検討していました。
しかし、ビンテージのES-175はなかなか市場に出回っていないため、ネット上を探し回ったのですが好みの仕様のものは全く見当たらず…。
連日ウェブ上を探し回っていたある日、たまたま林檎ギターズの取り扱い品のなかに希望の仕様とコンディションのES-175を発見しました。
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発見してすぐに林檎ギターズにTELし、在庫状況などを確認。
すると、『在庫あり・コンディションも良好』でした。
ウェブ上では金額が "ASK" だったので、確認すると税込み98万円。
手軽に飛びつくには厳しいような高めの値段でした。
『試奏&実際に目で見て確認しないとムリだな…』
すぐに試奏しに行きたかったのですが、私が富山在住のためなかなかそう簡単にも行かず、気になったまま時間が流れて行きました。
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林檎ギターズへ
2018年11月。
たまたま大阪に出張する機会があり、ついでに神戸の林檎ギターズに行くことにしました。
お店に行く数日前からTELで在庫の確認をしつつ、
『まだ売れるなよ! まだ売れるなよ!!』
と願っていた記憶があります(汗)。
ウェブを見て一番最初にTELをした際に対応してくれたのはTさんという女性。
その後のTELではSさんという男性スタッフが応対してくれていて、親切に在庫の状況を教えてくれたり、来店する前日にはギターの仮予約(取り置き)も対応してもらいました。
来店と試奏と迷い
大阪での仕事を終えた翌日、神戸へと出向き、林檎ギターズへ。
念願のビンテージES-175と対面することができました。
ちょうど林檎ギターズはお店の移転直後で、若干バタバタした様子。
(雑居ビルのなかの5Fか6Fあたりにあって、想定していたよりは狭い店舗だと思った記憶が)
店内は移転直後のためか、きれいに整理されておらず雑然としていました。
お店で対応してくれたのも、TELで対応してくれていた男性スタッフのSさん。
親切にES-175を取り出し(店内にたくさんギターが飾ってあって、その中にあった)、試奏させてくれました。
店内にはたくさんのギターが飾られており、おそらく100本くらいはあったような気がします。
高額なギターもたくさんありました。
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試奏をしたら、ドンピシャではないものの、かなり好みのサウンド。
実機を確認したら状態もよく『これは悪くないな』と感じ、購入しようという気持ちになりました。
ただし、大きなネックになったのは価格。
98万円(税込)…。
『うーん、、、』
ポンと手が出る金額ではなく、かなり迷いました。
試奏中はほとんど来客はなく、接客もいい意味で放置状態というか『好きなだけ弾いていいよ』な状態だったので、試奏しながら迷いまくり、結局1時間半くらいずっと試奏…。
たまにSさんにES-175に取り付けられているパーツのことなどを質問したら親切に答えてくれて、接客面については好印象でした。
【試奏の裏での電話応対】
ちなみに試奏中にお店のTELは何度か鳴っていて、試奏をしている裏でSさんが電話対応をしており、ギターを弾きながら『ちょこちょこ問い合わせが来てるな』と感じました。
簡単なパーテーションに区切ってあるだけだったので、問い合わせ電話のやりとりはけっこう聞こえたのですが、別のアコギとかストラトの話をしていた記憶です。
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交渉と違和感
試奏をやめ、ひとまず価格交渉をしてみることにしました。
Sさんにもう少し安くならないかと聞いてみると、
「このギターは委託販売なのであまり安くはできないと思いますが、委託主さんに確認してみます」
と委託主さんに交渉してくれることに。
『やった!』
値下がりの可能性に喜ぶ私。
ここでSさんはいったん私の目の前から離れ、別の場所(おそらく同じフロアーの別の部屋(事務所?))に移動しました。
『委託主との交渉か…。うまくいくかな…。』
などと考えていると、すぐにSさんが戻ってきて
『OKでました。税込93万でOKです。』
と。
ここで最初の違和感。
あっという間に戻ってきたので、『早っっっっ!!』というか『え、、マジで????』と思いました。
そんなにすぐに委託主にTELがつながるのか。
交渉がまとまるのか。
とりあえず、すぐに戻ってきたSさんに驚きました。
『もしかしたら、はじめから底値を設定していたのかもな…』
などと考えつつ、次の交渉へ。
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委託販売の相談
交渉で安くなったとはいえ、ES-175を買うとすれば大金が必要です。
ここで手持ちのギターの委託販売について相談しました。
・L-5(メイン)
・ES-125(サブ)
・ほとんど使っていないストラト(フェンダーカスタムショップ製)
手放そうとは考えていたものの、いずれも決して安くはない大事なギターです。
各ギターの写真をiPadで表示してSさんに見せながら会話が進みます。
ES-175の購入資金というか、上記のギターを売っていくらぐらい手元に入ってくるのか知りたかったので、
『この3本を委託販売したいんですが、いくらぐらいで売れますか?』
と聞くと、
「売りに出してみないとわからない。委託販売の場合は大きく値引き交渉が入る場合もあるので、ハッキリとした売価(いくらお渡しできるか)はわからない」
と、いまいち歯切れの悪い答えでした。
『○○万円くらいにはなるかな』と予想していた金額よりも大幅に安くなる可能性を示唆されたのです。
手持ちのギターがいくらになるかハッキリとわからないという状況に、これまた悩みました。
この時、Sさんから何度も言われたのは
「手持ちのギターを先にお店に送ってください。先に売って購入資金にしては?」
という話。
たしかに先にギターが売れればだいぶ購入の見通しも立つのですが、想定よりも安く売却となるとなかなか実行する気になれませんでした。
撤退
結局、ES-175を買わずに帰りました。
神戸まで行って、しかもかなり悩んだのですが、購入には踏み切れず…。
帰り際にはSさんの隣にいた林檎ギターズの店長(H氏)とも会話をし、
「あのES-175は、僕もメンテナンスしたけど、間違いなく良いギター。買っといて損はないよ!」
との心強いアドバイスをもらいました。
最後にSさんからは
「試奏の裏で電話が鳴っていたのが聞こえていたと思いますが、今日もES-175に関する問い合わせのたくさん電話が来ていました。」
「手持ちのギターをお店に送ってください。先に売って購入資金にしましょう。」
と。
『問い合わせの電話は来てたけど、ES-175の話はしてないよな(明らかに関連しそうな会話はしていなかった)。まぁ、ギターを売るための営業トーク※だろうな…』
そんなことを思いつつ、神戸を去ったのでした。
※よくある営業トーク:問い合わせが多い → 早く買わないとやばいよ、のながれ
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購入を踏みとどまらせた違和感
"価格が高い" というのが主要な理由ではあるのですが、いくつかの違和感が妙に引っ掛かり、購入に踏み切れませんでした。
【違和感】
・手持ちギターの委託販売の提案
・手持ちギターを委託販売を勧めるものの、いくらで売れるかは明確に示してくれない点
・ES-175の委託主との交渉の早さ
・問い合わせが殺到していたという嘘
スタッフの対応は親切で非常に好印象だったのですが、上記の違和感がどうにも気になったわけです。
もちろんこの時、林檎ギターズが詐欺行為に手を染めているとは全く知りません。
一般的に、あれほど『先にギターを送ってください』と言うだろうか。
林檎ギターズは中古・委託販売がかなり多いようだが(店内に並ぶギターを見てもわかる)、手慣れているならなおさら、おおよその売却目安の金額を提示してもらえないものだろうか。
委託主との交渉の早さと無理がある営業トーク。
楽器屋を去る前に、『購入の決意ができたら連絡します』と伝えたものの、これらのモヤモヤした違和感が気になり続けました。
およそ2ヶ月後 楽器屋からのTEL
2018年11月に神戸の林檎ギターズで実際のES-175に触れた、その約2ヶ月後。
2019年の1月。
林檎ギターズのSさんからTEL。
着信の時点でES-175の件であることは予想できました。
※結局、購入に踏み切れないままになっていた。
ひさしぶりのSさんとの何気ない会話からはじまり、『まだ悩んでいまして…』と伝えると
「ギターを送ってもらえれば委託販売しますよ。ぜひ先にギターを送ってください。」
と、以前にも誘いを受けた委託販売の提案でした。
ES-175の話はあっさりしていたというか、手持ちのギターを委託に出すかどうか、に話題が振られたのを覚えています。
3本の委託候補の中から、特にストラトを委託に出してはどうかと言われたのですが、『検討します』との流れでTELが終わりました。
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結局、この電話が林檎ギターズとの最後のやりとりとなりました。
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表示されない公式サイト・検索してわかった事件
最後のTELから数ヶ月後。
(たしか2019年7月。)
例のビンテージES-175の在庫状況が気になり、『さすがにもう売れちゃったかな』と林檎ギターズのサイトを見に行ってみると表示されないことに気付きました。
※ちなみにサイトはブックマークに登録してありました
『あれ?』
URLを確認するも、エラー。
『サイト移転したのかな?』と何気なく『林檎ギターズ』で検索すると、、、
『ええええ!?』
出てきたのは公式サイトではなく林檎ギターズの倒産と詐欺に関するニュースでした。
事件として話題となり、被害者の会も発足していた様子。
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このニュースを見て、いろんな違和感に合点がいきました。
委託を強く勧められていましたが、つまりは私のギターも被害に遭わんとしていたわけです。
お店に足を運んだ時に高価なギターを含め、たくさんのギターが飾られていましたが、今はどうなっているのか。
他人事ではなく、恐怖を感じました。
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違和感を感じたら踏みとどまる・距離を置く
2020年8月現在。
いまだに事件は解決していないようです。
幸運にも、既(すんで)の所で私は被害に遭いませんでしたが、あやうく大事なギターを失うところでした。
(検討していたES-175は購入不可になったこともあり、諦めました)
買い物をする際には、もし何か違和感を感じたら踏みとどまるのが良いかもしれません。
特に高級なギターを購入したり手放したりする場合はお店の見極めが重要だと感じています。
何か問題が起きたり、トラブルになった際に解決しづらかったり、いざこざに発展してしまうからです。
林檎ギターズに関する事件については一刻も早く解決することを願うばかりです。